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一日中仕事をしたはずなのに、肝心のタスクは手つかずのまま。やることリストはどんどん長くなり、思わずため息をつくこともあるだろう。問題は、やることリストはやるべきことを網羅した一覧表であって、仕事を生産的に進めるツールではないという点だ。そこで、筆者は「ワン・シング・リスト」の活用を推奨する。最も優先すべき1つのことを書き出すことで、なぜ生産性が上がるのか。筆者自身の経験を交えながら、解説する。


 ある晩、妻のエレノアが聞いてきた。「今日はどうだった?」

「うまくいったよ」と私は答え、その日の主な出来事を話した。そして、こう付け加えた。「でも、予定していたことが全部できなくて、いらいらしたけどね」

 妻は同情するような笑みを浮かべた。「あなた、毎日同じこと言っているじゃない」

 妻の言う通りだった。たしかに毎日そう言っていたし、そのことも不満だった。

 認めるのは恥ずかしい(私は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』という時間管理に関する本を書いたことがある)が、問題を認めないことにはそれに向き合いようがない。

 生産性の問題は、私たちの多くが在宅勤務という普段よりも緩やかな枠組みの中で仕事をしている現状では、特に難しい課題だ。一日中忙しく働いたのに、大事な仕事がまったく進んでいないなどということが、これまで以上に起きやすい(その一日はいったいどこへ消えてしまったのだろうか)。

 そこで私は、エレノアに愚痴をこぼし続けるのではなく、状況を変えようと決めた。自分にとっての最重要タスクをやり遂げ、一日の終わりに達成感を味わえる方法を見つけるためだ。

 一般的な方法もいくつか検討したが、断念した。

・もっと努力する:同じパターンを繰り返していることが問題ならば、原因は能力不足や努力不足ではないだろう。努力や規律だけでは克服できない障害にぶつかっていると考えられる。

・長々としたやることリストをつくり、それに取り組む:選択肢が多すぎると、先延ばしにつながりやすい。これについては、シーナ・アイエンガーとマーク・レッパーが非常に優れた研究を行っている。買い物客は商品の選択肢が多すぎると、何も買わない可能性が高くなるというものだ。

・自分を責める:インスタグラムを見ると、誰もが素晴らしい人生を送っているように見える。リンクトインを見れば、誰もが欲しいものをすべて手に入れているように見える。だが、実際にはそんなことはない。自分を他人と比較するのは、エネルギーの無駄だ。

 こうしたアプローチは、私には効果がなかった。おそらく、誰にとっても同じだろう。

 ところが、どんな方法にも勝る方法が1つだけあった。この方法ならば私も毎回実践できているし、きっと誰にとっても有効な方法だ。