日本に特有の課題と、期待される変化

 日本でも、複数のシンクタンクがスピーディに、WFH関連のレポートを発表しています。ここでは、HBRが扱っていない、日本に特有で、重要な課題や視点からの論考を2つ紹介いたします。

 1つは、日本総研の調査部上席主任研究員の池本美香著「コロナ禍で明らかになった子ども・子育て支援の課題」(同社サイトで全文が閲覧可能)で、乳幼児のいる家庭に焦点を当てています。

 緊急事態宣言下、保育施設にはエッセンシャルワーカーの子ども以外は登園自粛が求められ、子育て支援施設や児童館、公園などの利用が制限され、登園自粛中の家庭の多くが保育施設から十分な支援が得られず、不安やストレスを抱え、子どもにも行動面の変化が生じたことの調査等を示します。

 理由は、突発の事態により保育施設の現場が混乱したことに加えて、「親が就労等で『保育に欠ける』子どもを預かる」という旧来型の保育観により、支援の必要性についての認識が希薄だったことがある、と考察しています。

 対策を検討する上での参考として、池本氏はニュージーランドの施策を紹介しています。同国では、保育施設が各家庭を支援するという国の方針が共有されています。保護者にも担任と連絡を取りながら子どもの過ごし方を考えることや、親同士がつながって過ごし方のヒントを得ることなどが伝えられ、保育施設にも、国から配信されるメールによって、コロナ禍に何をすべきかがわかりやすく伝えられた、と著しています。

 背景には、10年前のカンタベリー大地震の後、メンタルヘルスに関する対応が進み、今回はその知見が活かされたことや、子どもの権利に対する国民の意識が高いことがあるとのことです。

 もう1つの論考は、野村総合研究所の未来創発センター上級コンサルタントの武田佳奈著「『新たな働き方』の定着を通じた女性活躍の実現へ」(『知的資産創造』2020年9月号)です。同稿のもとになる今年5月の調査(対象5140人)と、さらに7月に実施した調査(対象3289人)のレポート「アフターコロナの働き方改革と女性活躍推進に向けて」は同社サイトで閲覧できます。

 同レポートでは、在宅勤務について、多くの人が、業務への支障や生産性低下を認める一方で、効果もあり、今後も活用したいと感じたことを示します。それを踏まえて、在宅勤務等を活用した働き方の定着によって起こる"マネジメントの変化"こそが、働く女性の活躍推進につながると論じます。

 特に、武田氏が以前から注目していた「フルキャリ」(暮らしや子育てにも、仕事やキャリアにも意欲的に取り組みたいと考えるタイプ。詳細は武田佳奈著『フルキャリマネジメント』参照)の活躍につながると言います。

 フルキャリに対してこれまで不足しがちだった、上司による「仕事での成長・貢献を『期待』する」「仕事への意欲と本人を取り巻く家庭の状況を『共有』する」「成果につながる積極的な『機会付与』」を、リモートワーク環境では全ての部下に対して意識的に行う必要があり、結果としてフルキャリの活躍を引き出すことにつながると主張します。

 失業率の推移などでは、コロナ禍による景気後退は深刻化する様相ですが、国全体のシステムのデジタル化の遅れや上記2つの論考が指摘するような生活や働き方の課題の改善が進めば、禍転じて福となす、となるかもしれません。