Erik Dreyer/Getty Images

感染症の流行で店舗型のビジネスが苦戦を強いられる一方、デジタルサービスへの重要はますます高まっている。その競争を勝ち抜くうえでデジタルトランスフォーメーション(DX)は不可欠だ。ただし、最先端のAI技術を導入したり、優れたデータサイエンティストを雇ったりすることは変革の最優先事項ではない。技術が陳腐化することを前提に、従業員の再教育とスキル向上を目指して、変化にうまく適応できる人材に投資することがDX成功のカギを握る。


『エコノミスト』誌は先頃、こう指摘した。現在の新型コロナウイルス感染症の大流行がもたらす最も明白な影響の一つは、「データ利用型のサービスが、これまで以上に生活の多くの場面に入り込むことだろう」。企業にとって、デジタルトランスフォーメーションは近いうちに、ますます不可欠になることが見込まれる。

 一般的な認識とは異なるが、デジタルトランスフォーメーションで重要なのは、技術よりも人である。たいていの技術は金で買えるものだ。しかし、デジタル化がさらに進む未来に自社が適応できるか否かを左右するのは、次世代に向けたスキルの育成、人材の需要と供給のギャップ縮小、そしてリーダー自身および従業員の能力を陳腐化させないよう、未来に備えることだ。

 結局のところ、ほとんどの人は、ある仕事やキャリアにたどり着いているのは偶然的な理由からであり、その職に長くとどまる。立ち止まって自分の可能性を見直すことはめったにない。

この仕事は自分にふさわしいのか。いまのキャリアは、自分の興味関心と能力に最も適しているのか。もし他の道を選んでいたら、もっと楽しい人生を送っているだろうか――こうした自問をめったにしない。

 加えて、どの仕事でも学習は必要だが、人はすでに馴染んでいる物事、ルーチン、シンプルさを好む生来の傾向がある。そのため、ほとんどの人はある仕事に費やす時間が増えるにつれて、その仕事での学びが減っていく

 この傾向は、短期的には都合がよい。自動操縦で仕事ができ、心的資源(脳の処理能力)を確保しておける。しかし長期的には、望ましくない効果を生む。経験が増えるほど、新しい学びの機会が失われるからだ。

 さらに大きな損失がある。自分の真の潜在能力を解放どころか認識さえできないまま、全職業人生を過ごすことになりかねないのだ。

 ウィンストン・チャーチルはかつて、「よい危機を無駄にしてはならない」と言った。自分の可能性を見つめ直し、未来に向けて準備をしっかり整えるための機会――これこそ、目下のパンデミックがもたらす最大の「恵み」かもしれない。

 もちろん大半の人にとって、このことを認識するには時期が早すぎるだろう。しかし長い目で見ると、最終的には相当数の人々が、もっとよいキャリアに就き、意義も意欲もあまり感じなかった過去のキャリアを振り返っていることだろう。あたかも、充実せずに終わりを迎えた人間関係を――自分から選んで終えたわけではなくても――未練なく振り返るように。

 このことを踏まえ、本稿でいくつか提案をしたい。その一部は科学に基づいている。また、筆者ら自身の経験――さまざまな業界で現在と未来のリーダーに指導、コーチング、メンタリングを提供し、デジタル化がさらに進む未来に向けた準備を支援してきた――に基づく助言もある。