徹底したデータ化とコミュニケーション投資の重要性

堀口:私がクライアントの社員育成を支援する中で得られたことですが、DX人材育成のポイントは大きく2つあると実感しています。1つは育成対象者のアウトプットやコミュニケーション内容などを全て徹底してデータ化することにあります。蓄積されたデータを基に可視化や分析を通じて各人のスキルやマインドセットを科学的に理解することが重要です。とある企業でDX人材育成の研修を行い、その場の発言やアウトプットの内容に至るまでさまざまなデータを集めてスキル(論理的思考力など)とスタンス(主体的な取り組み姿勢など)をアセスメントしたところ、ベテラン社員で上司の評価も高い人ほど、自己評価が高く実際のアセスメント得点は低い傾向が見られました。DX時代に求められるスキルやマインドセットが従来とは異なるからこそ、豊富なデータ収集とその活用が正しい状況理解の肝となります。

 アクセンチュア自身もこうした情報資産を蓄積することでタレントマネジメントに活用しています。自社での経験・知見をアセット化することでクライアント社員のDX人材育成を支援しています(図表5)。

 もう1つは求めるマインドセットを備えた人材が埋もれてしまうことがないよう、上司が育成対象者とのコミュニケーションに時間を投資することです。週次で育成対象者の成長に焦点を合わせた対話を行い、本人を取り巻く就労環境や直面している課題および現在の実力値を理解し、能力伸長や業務推進へのアドバイスを行う必要があります。すなわち、上司は育成対象者を正しく理解し導くスキルを持っているか、またコミュニケーションに時間を投資する覚悟があるか、が問われているのです。

 上記2点を推進する上で、企業は経営層やリーダー層が自らDX事業にコミットし、新しいマネジメントスタイルに合った仕組みを備える必要があります。つまり、人員再配置や人事制度改革も踏まえた抜本的な人材マネジメント改革に踏み込まない限り、DXアジェンダを推進できる人材を育成することは困難といえるでしょう。