「人材ポートフォリオ」によって再配置先を定めることがリスキルの鍵

植野蘭子
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部
人材・組織 プラクティス 日本統括
マネジング・ディレクター

東京外国語大学外国語学部卒業後、自動車メーカーに入社し、人事部にて、海外人材採用・育成やグローバル幹部育成等、グローバル事業展開を人事・組織面から支える業務に従事。アクセンチュアに中途入社し、以降、幅広い業界において、グローバル化・デジタル化に向けた企業変革支援や人材・組織戦略、M&A支援などの戦略コンサルティングに従事。

植野:ポストコロナにおける生産性改革を推進するためには、新しい働き方を定着させることを含めた人材育成や意識改革が必要です。しかし、やみくもに人材育成や能力の底上げを行っても投資対効果の向上にはつながりません。人材のリスキルにおいて、一番重要なポイントは、人材転換のゴール、つまりリスキル後の再配置先を見据えて人材を育てる、ということです。

 では、まずその人材転換のゴールを定義するには何を進めていくべきなのか。最初に着手すべきは、今後の事業変革に向け、具体的にどこに、何人、どのようなスキルを持った人材が必要なのかを明確にすることです。これを「人材ポートフォリオの策定」と呼んでいます。

 ある製造業の事例ですが、全社的なデジタル変革を推進していく際に、必要な人材のタイプを以下の4つに分類し、それぞれのタイプに関して必要な人材の質・量の定義を行いました。その上で、既存の社員をアセスメントの上、どのタイプに該当するかをマッピングして、社内の人材のポテンシャルを可視化しました。

「変革創造人材」の即戦力
デジタルを最大限に活用し、新事業やサービスを創造する人材 
「変革推進人材」の即戦力
変革創造人材の創り出した新規アイデアの実践・拡大、またはデジタル化を活用した既存事業改革を主導できる人材
「変革創造人材」「変革推進人材」のポテンシャル人材
今はまだ十分なスキルがないものの、育成によって変革創造人材もしくは変革推進人材として戦力化できる可能性を持つ人材
「変革適応人材」
デジタル変革された仕組みを運用・実行する人材

 こうして人材タイプごとの、目指す状態と現状のギャップを分析した上で、①②の即戦力組はそれぞれの担当部署へ異動配置を進め、③④には、それぞれ再配置先を見据えたリスキルプログラムを提供していきました(図表3)。例えば、同じ営業組織に配置するにしても、営業のデジタル化などの変革プランを描き変革を主導する人材と、デジタル化された営業の仕組みの中で新たな営業のやり方を実践する人材には、リスキルの仕方が変わってきます。

 このように、今後の事業変革の方向性とも連動した人材ポートフォリオを作り、個々人の育成後の再配置先を意識することが、リスキルを提供する側にとっても受ける側にとっても極めて重要です。

 アクセンチュアでは、デジタル時代に適応したスキルを持つ人材への転換および育成を支援する「タレント・ディスカバリー・プログラム」を提供しています(図表4)。このプログラムは、前述の変革を創出する人材の育成だけでなく、変革された組織に適応するための育成まで、広範なレベルの変革人材育成に対応しています。クライアント企業での人材再配置ニーズと対象者の初期アセスメント結果に基づいて、多数用意されているトレーニング講座を、育成目的に合わせて最適なカリキュラムとなるように組み合わせることが可能です。

 また、このプログラムの主な特徴の一つは、「実践型」であることです。机上で学ぶのみならず、アクセンチュアのこれまでのデジタル変革経験に基づいたケーススタディーも活用し、コンサルタントがコーチとして伴走しながら、再配置先で実践できるレベルまで育成を行います。