内ではなく外を向く

 移行期に扁桃体がハイジャックされることは、別の形でも私たちの不意を突く。すなわち、自己中心的になることだ。

 研究によると、不安な気持ちは、より自己中心的な思考と行動を示す要因になる。不確実性の重圧が高まると、それに伴う不安が世の中に対する見方を偏らせて、自分自身と自分の苦悩しか見なくなる。

 視野を広げる力を低下させることも、同じように有害だ。言い換えれば、他人の視点から物事を見ることができなくなる。

 残念ながら、私たちは危機や移行期を乗り切ろうとするときに、落ち着いて周囲とのつながりを感じられるようにしてくれるはずのものを、拒絶したり無視したりする。コミュニティや人とのつながりを求めようとせず、自分の内側に引きこもり、自分の状況と他人の状況をひたすら比較する。

 このパターンを打ち壊すことは、困っている人に思いやりを示し、声をかけることと同じくらい、簡単にできる。

 2016年のある研究から、他人に贈り物をすると、自分に同じ贈り物をする場合よりも幸せになって、レジリエンスが高まることがわかっている。他人を思いやることは、危機に直面したときは特に、自己利益を実現する賢明な方法なのだ。

 皮肉なことに、困難な移行期を乗り越えて得られるであろうものは、初期化された心理状態が得ようとするものとは正反対だ。私たちは状況を考えすぎるのではなく、自分自身を理解しなければならない。そして、自分の必要より他人の必要について考えなければならない。

 人間とは、人間であるのであって、人間になろうとするものではない。私たちに共通する人間性は、この苦悩を共有しているということだ。

 幸い、私たちは訓練すれば、脳の初期設定を配線しなおして、より深い自己認識と集中とレジリエンスの境界域を乗り越えることができる。