チェーン型からネットワーク型へ
デジタル・サプライ・ネットワークへの変革を

 こうした状況から脱するために必要なのが抜本的なSCM改革だ。その本丸が「チェーン型モデル」から「ネットワーク型モデル」への転換である(図表)。

 サプライチェーンといえば、各プロセスを担う部門が直線的につながるチェーン型の構造を持つのが、多くの日本企業が有する従来のスタイルだ。しかし、国境や業種の壁を越えた多様なプレーヤーがオープンにつながり合うエコシステムの形成が価値創出の前提となっている両極化の時代においては、従来型のチェーン型モデルで、企画から供給に至る全てのプロセスをコントロールするのは難しくなっている。そこでデロイト トーマツが提案しているものが、サプライチェーンをネットワーク型へ進化させた「デジタル・サプライ・ネットワーク(DSN)」の構築だ。

 伝統的なチェーン型モデルにおいては、原料や製品といったフィジカルな「モノ」を、バケツリレーのごとく上流から下流へと受け渡していくことに主眼があった。しかし、このモデルのままで現場から情報を吸い上げようとすれば、逆方向にバケツリレーをすることになる。これではサプライチェーンが複雑になればなるほど情報の把握に時間がかかり、正確性も損なわれてしまう。サプライチェーン上に存在するあらゆるデータを生かすために情報流通網を高度化しようとすれば、あらゆる部門、あらゆるビジネスパートナーがAPI連携を通じて相互につながり合うネットワーク型モデルの構築と活用が不可欠なのだ。

 その際、欠かせないのが「全体最適」の視点だ。日本企業においては、各部門が部門単位で最適化を目指す傾向が強く、これがセクショナリズムのまん延につながっている。自部門の成果を上げるための部分最適化にこだわるあまり、部門間の連携が十分でなく、結果的に組織全体としての利益が損なわれることがあるのだ。DSNの構築は、このようなセクショナリズムを脱し、全体を俯瞰して合理的な最適化に踏み出すための契機にもなる。

 一連の改革から期待できる最大の効果は、現場と経営がつながることで戦略と実践がかみ合い、価値創出の好循環が生まれることだ。サプライチェーンが世界に広がるにつれ「全体を把握できない」ことに不安を募らせる経営者は多いが、ネットワークで全てがインタラクティブにつながり、拠点ごとの活動がリアルタイムに財務指標に変換され、全社的なBSやPLにどんなインパクトを与えるかをモニターできるようになれば、今直面している課題が明らかになり、リスクを適切に評価できるようになる。
 
 データという共通言語を使うことで、カルチャーの異なる外部企業とのつながりが強化され、エコシステム全体の質の向上が期待できるのも大きなメリットだ。従来型のサプライチェーンでは、子会社やグループ会社といったカルチャー的にも近しい組織が中心だったが、DSNには、業界や組織を越えた異質なカルチャーを持つプレーヤーも多数つながることになる。こうした情報ネットワークに常に多様な情報が流れ込む状態をつくることは、イノベーションを誘発する仕組みを組織に埋め込むことにつながる。