●睡眠障害の問題は、働き始める前から存在する

 質の悪い睡眠が仕事のパフォーマンスに与える悪影響に関しては、すでに立証されている通りだが、実際には就職前の高校や大学時代から睡眠障害が広く見受けられると、心理学に関する多くの研究が示している。

 これらの研究、そして睡眠障害と臨床的問題(それが幼少時まで遡るケースもある)との間に強い因果関係があること明らかにした関連研究によれば、睡眠障害を抱える生徒や学生の学業成績が著しく低いこと、そしてそのような生徒や学生が数多くいることが示されている。

 高校や大学での試験結果を含む学業成績は、本来そうであってはならないにもかかわらず、その後の就職につながる重要な要素である。そのため、健康な睡眠習慣がなければ、やがてキャリアなどへの長期的な影響を及ぼすことは明らかだ。

 興味深いことに、単に授業の開始時間を遅らせるだけでも、生徒や学生の睡眠パターンの大幅な改善につながることをメタ分析研究が示している。おそらく若い人たちは自然と(あるいは誘惑に負けて)夜更かしをして寝坊する傾向にあるからだろう。

 ●よい睡眠は従業員エンゲージメントを高める

 組織のエンゲージメントのレベル、すなわち従業員やマネジャーが職場で示す熱意や満足度、生産性を高めることを専門とする数十億ドル規模の産業がある。

 その大部分は、オフィス設計やカフェテリアの料理の改善、そして人と仕事のマッチングの向上に費やされていて、それはそれでよい。だが、従業員エンゲージメントの原動力となる睡眠の質が、そうした事柄に匹敵するほど重要だという認識が、企業の側にない。

 ここで重要なのは、エンゲージメントの原動力といっても、上司の能力レベル(次項を参照)など他の多くの要素とは異なり、睡眠は自己管理できる場合が多く、睡眠パターンを改善すれば明らかな見返りが得られる。