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睡眠不足が疾病リスクを高めるだけでなく、仕事のパフォーマンスを低下させることは広く知られる。だが、極端に短い睡眠で偉業を成し遂げた成功者に倣ってか、いまだに寝不足を自慢するリーダーがいる。企業も組織のエンゲージメント向上に予算をつけても、そのカギとなる睡眠に焦点を当てることはほとんどない。本稿では早い段階から睡眠障害に対処し、質のよい睡眠を手に入れることで、よりよいリーダーになるための教訓を教える。


 慢性的な睡眠不足は、職場の日常風景だ。米国では成人の約25%が不眠症に苦しんでいるという報告があり、別の報告ではほぼ同数の人々が過度な眠気を日常的に感じると答えている。

 当然のことながら、睡眠障害はがんや鬱、心臓疾患のリスクを高める。そして、生産性も下げてしまうメタ分析研究では、睡眠不足に陥ることで機嫌が悪くなったり情緒不安定になったりするため、職場でのパフォーマンスがかなり悪化することが示されている。

 睡眠が足りないと、仕事のパフォーマンスや生産性、キャリアの向上、満足度が損なわれ、仕事関連の事故や欠勤、職場での非生産的な行動の増加につながる。逆に、質のよい睡眠は記憶力知識獲得学習の向上と関わりがある。短時間の昼寝でも、仕事のパフォーマンスにかなり好ましい影響を与えることがわかっている。

 同時に、日常的な睡眠の質と量には個人差があるものの、それだけでは人々のパフォーマンスの違いを十分に説明できない。他の心理的特性や行動傾向と同様、このような違いの一部は遺伝的要因がもたらしている。つまり、遺伝的要因を除けば、人が生産的であるために実際に必要な睡眠の質と量は、各個人の性質(年齢や一般的な健康状態だけでなく、それぞれに特有の性格や生物学的構造)に左右される。

 傑出した成功者の睡眠時間が極めて少ない傾向にあるという話は、よく耳にすることだろう。前ペプシコ会長兼CEOのインドラ・ヌーイに必要な睡眠時間は1日わずか4時間、ファッションデザイナーで映画監督のトム・フォードの場合はたった3時間である。

 海運王オナシスの名言も有名である。「眠りすぎるな。さもないと失敗者として目を覚ますことになる。1日の睡眠時間を3時間減らし、それを1年間続ければ、1カ月半の追加時間を成功へとつなげることができる」

 しかし、こうした逸話には科学的裏づけが乏しい。複数の逸話はデータではない。

 では、睡眠と仕事との関係について、実際に明らかになっていることは何だろうか。我々が睡眠と仕事のそれぞれに、成人期のおよそ3分の1の時間を使うと仮定した場合、両者の間にはどのような関係性があるだろうか。

 科学的に証明されている3つの重要な教訓を、次に挙げよう。