投票の向上

 サマンサと配下の経営陣は、週次のズーム会議で難しい意思決定を迫られていた。これから年度末まで、全社一律の給与20%カットを実行するかどうかである。

 厳しいがやむを得ないという考え方を、ほぼ全員が受け入れているように思われたが、ここでキャシーがいくつかの懸念を表明した。キャシー自身のチームは給与が不当に低いと感じており、報酬の話し合いのたびに繰り返し問題視されていたのだ。

 コスト削減をすぐにでも実施する必要性についてしばらく話し合った後、サマンサは議論を締めくくる準備に入った。

 対面での会議ならば、サマンサはこんなふうに言うかもしれない。「では、ほかの皆さんはどう思いますか。20%減給でいいですか、それとも反対でしょうか」

 そしてテーブルを見回し、躊躇しているメンバーがほかにもいないかどうか、些細な視覚的ヒントを探る。首をかしげたり、指をコツコツ鳴らしたり、天井を見上げたりしている人がいれば、指名して発言を求める。

 しかし、バーチャル会議での彼女はといえば、切手大のメンバーたちが映る画面を見渡しながら、それぞれの胸中に思いをはせることしかできない。

 別の選択肢として、採決を取るという方法がある。これは対面でもバーチャルでも同じように機能するが、ここではサマンサはオンラインでの投票を行うものとしよう。結果は「反対」(キャシー)が1票、「賛成」が9票であった。これでは、チームにただ意見を尋ねる場合と大して変わらない。

 オンライン会議が可能にする、もっとよい解決法がある。キャシーの懸念を聞いた後、サマンサは違う形で投票を実施してはどうだろうか。すなわち、全社一律の20%減給を実行すべきかを、1~5段階(1=いいえ、3=たぶん、5=はい)で答えるようすぐに求めるのだ。

 幹部1人は(おそらくキャシー)は2、他の6人は5、3人は4を選んだ。

 4を選んだ幹部らを、「一応賛成」組と呼ぼう。賛成だが、やや懸念もあるという人たちだ。サマンサは投票結果をチームに見せながら言う。「少し躊躇が見られますね。なぜ4なのでしょうか」

 この時点でキャシー以外のメンバーも、懸念を表明してもよいのだと背中を押されたように感じている。CFOはこう指摘した。客先で働くサービス技術者のために、ボーナス資金を出す件について経営陣で話し合ったことがあるが、これは「全社一律」の減給の例外となるのではないか――。

 このもっともな指摘を受け、サマンサは気づく。キャシーのチームについても、例外的な待遇をしてもよいのではないか、と。

 もちろん、サマンサはこの種の投票を、対面からバーチャルでの会議に変更する以前であっても活用できたはずだ。しかし、コロナ禍以前には、マネジャーはこの方法をほとんど活用していなかった。

 いまでは簡単に手早く実施できるようになり、匿名投票や公開投票を募ることができる。投票によって個々人は、懸念を抱いているのは自分だけではないと知ることができるわけだ。