原則(3)顧客と従業員に安全な行動を促す

 小売店の顧客は、組み立てラインの部品ではない。店側にとっての大きな課題は、購買体験を損なわずに、顧客の行動を変えることだ。

 そこで役立つのは行動科学のテクニックである。文章の看板(「マスクを着用してください」など)を出すのではなく、マスクを着用した顧客と従業員が親指を立てている写真やイラストを掲示すべきだ。こうすると顧客同士が共通のアイデンティティを感じ、つながりを見出し、互いに規範を守るよう促すようになる。

 店舗側が、特定の行動を促す「ナッジ」を用意してもいい。たとえば、矢印や看板で進行方向を示すのではなく、モニターや小さな障害物(販促アイテムなど)を一時的に設置して、顧客が最も安全な動きをするよう促すのだ。

 全般的に、店舗環境はソーシャルディスタンスの要請を一貫して明確にし、自然な行動の延長になるようにして、社会的にポジティブな体験になるよう設計し直す必要がある。

 こうしたナッジは、小売店の従業員の健康と安全を守るうえで助けにもなる。現在は、通常なら「裏方」の低賃金従業員が、これまでになく必要不可欠な労働者になった。

 彼らに防護具を支給し、ワークスペースを頻繁に消毒する時間を与え、ソーシャルディスタンスを維持できるように小売スペースを設計すべきだ。ソーシャルディスタンス・ポリシーを策定し、実施するプロセスに従業員の参加を求める必要がある。金銭的および非金銭的インセンティブを用意し、従業員と客の安全を守りつつ、顧客体験を向上させるアイデアを従業員から募るのもよいだろう。

 彼らの労働環境は潜在的に危険にさらされるので、仕事のモチベーションを高め、エンパワーメントし、新型コロナウイルス感染症の影響を抑える独創的な解決策を生み出すツールを与えるべきである。

 安全が競争優位を生む

 もちろん小売店が営業できるかどうかは、その地域の感染レベルと、公衆衛生の専門家の見解によって決まる。そのうえで営業可能になったなら、上述の原則を適用して、顧客と従業員の健康に配慮していることを示すと、競争優位を得ることができる。

 消費者は、安全を最優先するビジネスにロイヤルティを示してきた。ケープコッド(マサチューセッツ州)のアイスクリーム店ポーラーケイブから、ロサンゼルスのヒューゴズ・タコスまで、安全を重視した店舗は地元から大きな支持を集めている。

 これら3つの原則を守れば、小売店は顧客の安全とみずからのビジネスを守る、ソーシャルディスタンスを実践することができるだろう。


HBR.org原文:What Safe Shopping Looks Like During the Pandemic, July 24, 2020.


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