原則(2)変動性を管理する

 効率とスループットが最大化された店舗は、工場の製造ラインのように見えるはずだ。ソーシャルディスタンスを維持するために、顧客は指定された時間に来店し、指定された速度で買い物をする。

 だが、もちろん現実はそうはいかない。顧客は自分の都合のよい時間に来店して、自分のペースで買い物をする。それがシステムに変動性をもたらす

 変動性を管理する方法の一つは、店内の通路を高速道路と考え、顧客同士の接触を事故と考えることだ。そこで目指すは、事故のリスクが少ない環境づくりである。

 片側2車線の高速道路を想像してほしい。すべての車両が同じ方向に向かって、同じ速度で走れば、車がすれ違うことはないし、衝突事故はめったに起こらない。しかし、半数の車両がゆっくりと走り、残りの半数が映画『ワイルド・スピード』のように高速で走れば、車のすれ違いが頻繁に起こり、事故のリスクは劇的に上昇する。

 スーパーマーケットの通路を顧客が歩く姿を想像すると、同じ原理が当てはまることがわかる。筆者らの研究では、来店客が全員同じペースで動けば、客同士の接触は少なくなることがわかっている。一方、移動の速度がまちまちだと、客同士が接近する可能性は高まる。

 交通工学の専門家は、速度の変動性が事故のリスクを高めることをずっと以前から知っている。そのため合理的な最高速度と、一部の道路には最低速度が定められているのだ。

 小売店で、顧客の動きを一定に維持する方法はさまざまだ。たとえば、米国の多くの食料雑貨店チェーンは、60歳以上専用の買物時間帯を設けている。この客層は同じような速度で買い物をするため、接触の可能性は低下する。

 もう一つの方法は、来店予約を奨励することだ。靴店農産物の直販店スイミングプール美術館はこの手法を使って、人口密度と変動性を抑えている。

 店内を一方通行にすることも、顧客の接触を防ぐためによくとられる措置の一つだ。筆者らの研究でも、これは顧客同士の接触を減らす有効な方法であることがわかっている。顧客の動きを一方通行にすると、双方向の場合よりも客の接触を4分の1に減らせることがわかっている。

 経営側としては、店内に多様なスペースをつくりたいと思うかもしれない。必需品はスピーディーに通過するエリア、ある程度物色するがトレーに入った商品を選ぶだけのエリア、そしてもっとゆっくり商品を見られるエリアといった具合だ。いずれにしろ、エリアによって顧客が動く速度を同じにすることがカギとなる。