株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換

 従来のCSRやESGも、社会貢献という考え方ではResponsible Businessと共通しています。しかし、CSRやESGにおいては、その取り組みが利益の獲得を前提とするビジネスとは区別されていたのに対して、Responsible Businessは社会課題の解決をビジネスの中核として捉え、社会貢献と自社の利益の両立を目指していく点で大きく異なります。

 そもそもResponsible Businessという考え方が生まれた背景には、テクノロジーの進化がもたらすディスラプションの一方で、さまざまな社会課題が生じているという状況があります。これに対して、ビジネスと社会の発展が相互に補完し合う関係を築くことができなければ、いずれは資本主義が立ちゆかなくなるのではないかという根源的な問いが、先進国を中心とする企業から提起されるようになったのです。

 こうした動きを受けて、アクセンチュアを含む米国の主要企業で構成される「ビジネス・ラウンドテーブル(BRT)」は2019年8月、「企業の目的に関する声明」を発表し、「株主資本主義との決別とステークホルダー資本主義への転換」を宣言しました。

 これまでの株主の利益追求だけに偏重した経営ではなく、従業員や取引先にとどまらず、地域のコミュニティーやその他のステークホルダーといった全体の利益に資する企業活動を実践し、それを中核的なビジネスとして位置付ける姿勢が、これからの企業には求められるようになったのです。

 もともと日本企業のDNAには近江商人の「三方よし」の考え方が根付いており、いわゆる株主資本主義とは相反するところでビジネスを展開してきた歴史があります。その後、ビジネスのグローバル化の流れの中で、日本企業も株主資本主義に急速にかじを切るわけですが、今度はその株主資本主義が、グローバルのビジネスの舞台で大きな転換点を迎えているという状況です。

 そう考えてみると、Responsible Business時代の到来は、まさに日本企業の新たな飛躍に向けたチャンスだといえます(図2)。ここで自らのDNAを生かしたゲームチェンジを仕掛けることで、新たなビジネス領域でリーダーシップを発揮できる大きな可能性が生まれてくるはずです。