●課題とよくある落とし穴

 こうした一連のプロセスを通して、課題や限界も次々と露呈したことは言うまでもない。

 たとえば、障がい、性的志向、性自認に関するデータがどの程度の質と完全性を持っているかは、新型コロナウイルス危機が始まった当初、あまりわかっていなかった。そのため、データを用いる前に、まずデータを分析して、おおむね正確な情報が記されているかを確認する必要があった。

 調べてみると、患者の障がいに関するデータは目を見張るほど質が高く、データを利用することに問題はなかった。しかし、性的志向と性自認に関するデータはお粗末だった。

 残念ながら、データの質について評価作業を終えたときには、コロナ危機はすでに峠を越えていた。これらの人たちに対する不平等の有無を検討し、問題点を是正することに関して、私たちの能力整備は後れを取っていたと言わざるをえない。

 データサイエンスや医療の公平性に詳しくない人が、データの解釈を誤るケースがしばしばあることにも気づいた。そのため、どのようなデータを、どのような形で、誰に対して見せるかには、細心の注意を払う必要があった。

 複雑なデータはまず、データを扱った経験を持つ人たちの小人数のグループに解析させることにした。それに対し、比較的単純なデータは、多くのスタッフがすぐに閲覧できるようにした。

 たとえば、有色人種のコミュニティで陽性率が高いというデータはわかりやすいので、多くのスタッフにそのデータを提供した。しかし、データのリスク調整や、共線性過剰調整の問題への対処といったことは、小人数のグループで行い、結果を知らせるスタッフも慎重に選んだ。誤解が生じることを避けたいと考えたのである。

 コロナ危機は、医療における不平等を早急に解決すべきであること、そして過去数十年の間に、この点で進歩があまりに乏しかったことを痛切に浮き彫りにした。

 現状では、公平性のデータに関して標準的アプローチが確立されておらず、州政府と連邦政府も人口統計上の属性ごとに見たデータを収集・報告できていない。

 そのため差し当たりは、それぞれの医療機関が独自に判断して、どのようなデータを集めるのか、なぜそのデータを集めるのか、いつ、どのように集めるのか、誰にそのデータを知らせ、データをどこに保管し、どのように視覚化するかを決めなくてはならない。

 しかし、こうした「放し飼い」状態をいつまでも続けるわけにはいかない。標準化されたアプローチ、明確な基準、模範となるやり方を確立しない限り、真の進歩はありえない。


HBR.org原文:A Data-Driven Approach to Addressing Racial Disparities in Health Care Outcomes, July 21, 2020.


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