●AIやコボットを使って従業員のスキルを向上させる

 未来の職場で活躍するために必要なスキルは急速に変化している。以前、我々が実施した調査によれば、デジタルスキルや高い認知能力、社会的および感情的スキルのすべてに対する需要が高まっている。

 AT&Tは、従業員のデジタルスキルをトレーニングする広範なプログラムに10億ドルを投資した。ウォルマートも2015年以来、「ウォルマートアカデミー」や「パスウェイズ」といったトレーニングプログラムに27億ドルの大金を投じている。

 ウォルマートでは、AIを搭載したコボット(協働ロボット)を店舗に投入し、販売員に協働の仕方をトレーニングした。コボットには棚のチェックや床掃除といった単純作業を任せ、生身の人間はより多くの時間を顧客対応に充てられるようにした。

 AIテクノロジーは、新たなスキルの習得による別の要素ももたらす。スラックのようなプラットフォームは、新しい職場環境を作り出すうえで重要な役割を果たす。

 そこでは、イノベーションやアイデアがクラウドソーシングによって創出される。これまでなかった協働や創造のスキルがもたらされ、従業員の能力は保持されるだけでなく、格段に向上する。そして、イノベーションが生み出す利益を押し上げるのだ。

 ●給与やインセンティブを引き上げる

 近年、産業革命や20世紀初頭にヘンリー・フォードが従業員の賃金を引き上げたことに通じる動きが出てきている。アマゾンが最低賃金を大幅に引き上げ、フェイスブックも賃金を上積みした。

 一般的に、賃金の増加は強いシグナルになりえる。フォードが高い給与を車の需要を高める施策と見なしたように、賃金の引き上げやトレーニングによって収入の増えた従業員が、中期的にはアマゾンでより多くの品物を購入するようになるかもしれない。

 ●地元コミュニティで積極的に活動する

 地元のコミュニティ活動に積極的に参加することを奨励している会社もあり、そこには官民パートナーシップ(PPP)を通じたものも含まれる。

 たとえばギャップ(GAP)では、不利な条件に置かれた人々に職業訓練プログラムを提供している。グーグルの「グロウ・ウィズ・グーグル」という取り組みでは、軍人の配偶者や小規模企業の経営者、教員、スタートアップなど多様なコミュニティにデジタルスキルのトレーニングやツールを提供している。

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 これらは、自動化やAIのメリットを享受しながら、同時に従業員のウェルビーイングを向上させるために企業が検討できる施策のごく一部である。

 重要なのは、この2つの側面を連動させながら進める必要があるという点だ。我々の研究が示したように、企業の業績と社会のウェルビーイングはいわば車の両輪であり、同時並行で変動していくのである。

 ビジネスリーダーにとって「テクノロジーの社会的責任」という新たな形態に即したアプローチを見出すことは、AIと自動化の時代における重要課題の1つになるだろう。

HBR.org原文:Your AI Efforts Won't Succeed Unless They Benefit Employees, July 25, 2019.


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