(2)コストか、人材か

 企業は危機に直面すると、コストの削減、現金の貯め込み、統制の強化へと向かう。理由は単純だ。市場と今後の収益に関する予測を立てにくいときには、利幅の拡大こそが確実な打ち手だからである。

 だがそうした措置は、従業員のウェルビーイング、モチベーション、職務満足度、雇用の安定に直接影響を及ぼす。

 女性CEOと、業界・職能横断的に通用するスキルと能力を持つゼネラリスト型CEOは、パンデミックが就業環境と就業態度に及ぼす悪影響をより強く意識していた。これらのCEOは、従業員の不満と意欲低下に積極的に対処している。

 中国の大手オンライン相互保険会社の女性CEOは、次のように強調した。「人材とイノベーションは、我々の事業では非常に重要です。これらが成功要因であることはコロナ禍でも変わりなく、今後も変わりません。社員への研修と教育、そして有能なマネジャーを他社から招き入れることに、私はためらわず投資しました。パンデミックの収束後に当社の成長を助けてくれるのは、この人たちです」

 結局のところCEOは、コストと人のどちらかに注力するためにもう一方を犠牲にする余裕などない。営業利益のマイナスと従業員の意欲低下は、どちらも自社の存続を危うくさせる。

 したがって自問すべきは「コストをどう減らすか」ではなく、「競争をいかにして続けるか」である。それによってリーダーは、生産性、創造性、イノベーションに負の影響をもたらす悪循環を避けることができる。