明確なパーパスを基に
本物の体験を提供する

 ソーシャルディスタンスの確保を余儀なくされるポストコロナの世界においては、あらゆる領域でデジタル化が進む一方で、人と人との絆や、リアルな体験が持つ価値はこれまで以上に高まるだろう。それを理解しないまま、ビジネスをただリアルからデジタルに置き換えるだけでは、人間が根源的に希求する「人間らしさ」を切り捨てることになりかねず、ステークホルダーに提供できる価値が目減りしてしまう。今こそデジタルがもたらす効率性に人間らしさを接続し、HXの解像度を高めることで価値提供を増幅させる仕組みを構築することが重要なのだ。

 前述の通り、ものがあふれ、情報も一瞬で世界中に広がる現代においては、消費者はたやすく多彩な商品やサービスを比較検討できる。新しい商品やサービスを試すのも、他にスイッチするのも簡単だ。こうした環境で選ばれるためには「本物の提供価値」を持っていることは最低条件であり、さらに「選ばれ続ける」ためには他の選択肢をりょうがする圧倒的な提供価値<Kill Value Proposition>が必要になる。もちろんそれは簡単なことではないが、その実現を目指すなら、CX(顧客<Customer>の体験)、EX(従業員<Employee>の体験)、PX(ビジネスパートナー<Partner>の体験)を足し合わせたHXを徹底的に追求する姿勢が欠かせない。

 その際、最も重要なのが企業の存在意義(パーパス)を改めて明確にすることだ。パーパスとは、端的に言うと「なぜこの企業が存在するのか?」というシンプルな問いへの答えである。パーパスドリブンな企業は、顧客から長期的なロイヤルティーを得やすいだけでなく、競合の約3倍のスピードで成長を遂げるというデータすらある。多様なステークホルダーを統合的に取りまとめるHXの実現には、その根幹に社会的意義のある目的を掲げることで1つの方向に向かい、そして一人一人のステークホルダーに人間として誠実に向き合っていくことが重要になる。こうしたアプローチは、一見遠回りのようだが、顧客がより複雑化し、不確実性の高い時代において、持続的な成長のための最短ルートなのだ。


デロイト トーマツ グループ「2020 Global Marketing Trends」:https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology/articles/dd/global-marketing-trends.html