「不確実な未来」を「成長の可能性」に変える

 最後に、環境の変化を受けて、セールス、マーケティングはどのように変わっていくのかについて考察します。

 最も大きな変化としては、すでに触れた「顧客接点そのものの劇的な変化=リモート化」が挙げられます。従来から一部においてはリモート化が進んでいた「コマース」のみならず、「コンサルティング」や「セールス」についてもリモート化が進んでいます。地理的な制約から解放される中では、営業の「量」ではなく、いかにコンシューマーに寄り添った価値提供ができるかが勝敗を分けることになります。こうしたシフトは、B2Cだけでなく、B2Bの世界でも同様に起こっています。

 こうした結果、ヒューマンな視点を持った優秀なセールススタッフはこれまで以上にコンシューマーから支持されるようになり、彼らをサポートする仕組み・チーム体制などについても検討しなければなりません。また同時に、顧客自らが動き、能動的に商品を検索・購買・各種問い合わせや手続きをするという流れも当然ながら進展する中では、セールスとコマース、さらにはマーケティングやカスタマーサービスという4つの領域の役割や境界も曖昧になります。コールセンターに問い合わせをしたそのついでに、別の商品に関して追加購入したいと考えるコンシューマーがいても全く不思議ではありません。

 このため、企業としてそれぞれをうまく連携・機能させるためには、顧客に関するあらゆる情報をつなげる、統合的なカスタマープラットフォームの構築が必要となります。これにより、全てのチャネルで同じ水準で顧客理解ができるようになることはもちろんのこと、情報統合により新たな付加価値を創出することを目指すことになります。一方、それぞれのチャネルで求められる業務が高度化・複雑化するため、AIなどを積極的に活用することも視野に入れなければなりません。適切なレコメンデーション、チャットボット、ボイスボットなどによる自動化などはこれまで以上に進めていくことが求められます。

 今回のCOVID-19によりハイライトされている、リモート化、オムニチャネル、働き方改革、社会的貢献といった企業アジェンダは、実はこれまでもデジタライゼーションの文脈の中で指摘され続けてきたものであり決して何か真新しいものではありません。ただ、新たな環境の中で生き残るためには、待ったなしの状況となっていることです。

 今回のパンデミックがそうであったように、ポストコロナの時代も「不確実な未来」です。不確実な未来と向き合うためには、未来を予測しそれに備える「頑強性(Robustness)」と、未来は予測できないという前提に立ち、柔軟かつ迅速に変化を続ける「反脆弱性(Antifragile)」の2つの考え方が必要です。この2つの考えはいずれか一方が優れているというわけではなく、両者を組み合わせていくことが重要となりますが、市場の求めるものが大きく変わるタイミングでは、従来を延長するビジネスではなく、新たな価値(the NEW)をより早く提供できた企業が成長の機会をつかむことは自明です。新たな価値の成否については、実際に市場にその価値を解き放ちヒューマンの反応を見ない限りは、机上では予測できません。すなわち、アジリティーをもって市場に臨む「反脆弱性」の重要度はこれまで以上に増します。不確実な未来で成長するためには、経営、商品・サービス開発、業務プロセス、ITなどの企業構成エレメントの全てにアジリティーを実現する仕掛けを埋め込むことが肝要となるでしょう。