CEOの意思決定でdXの推進を

── 新しいエコシステム構築の動きは、GAFAのような巨大プラットフォーマーへの対抗軸になり得るでしょうか。

 なり得ると考えます。これからのマーケット拡大の鍵は、豊かな経験価値を提供しながら長期的な課題解決に取り組むことです。MaaSやループの例を見ても分かる通り、そのためにはデジタル空間でバーチャルの経験を提供するだけでは不十分であり、リアルの世界(フィジカル空間)をいかに変えるか、そのための社会システムをどう再構築していくかに重点があります。

 圧倒的なパワーで市場を席巻していたGAFAの成長がここに来て鈍化し、勢いに陰りが見られるのも、まさにこの点に彼らの弱みがあるからではないでしょうか。グーグルがスマートシティーの開発から撤退したことは象徴的な事例といえます。いかに巨大なプラットフォーマーであっても、リアルな社会システムを構築しようとすれば、そのためのケイパビリティーを持つプレーヤーとのアライアンスが不可欠ということです。デジタルのメソッドをそのままフィジカル空間に移行させても勝てません。日本企業はフィジカル空間で成長してきた背景があるので、この部分に貢献できる力を持つ企業が多く、むしろチャンスといえるでしょう。

── これらの変革を進めるに当たって日本企業の課題は何でしょうか。

 デジタル変革の立ち遅れに今すぐ対応することです。どんな強みを持つ企業であれ、デジタル化が遅れていたらどこにもつながることができません。特に、直ちに見直すべきは意思決定に当たってのトップマネジメントの意識です。デジタル変革を重要経営課題に掲げる日本企業は大変多くなっているものの、実態を見ると、CEOをはじめトップマネジメント個々人が自分自身のミッションとして積極的に学習し、責任を持って意思決定している場面はまだまだ多くない。

 これは、多くの日本企業で歴史的に、ITにまつわる意思決定が実質的にCEOではなくCIO任せ、場合によっては情報システムの部門長に委ねられたままになってきたことにも起因していると思います。

 しかし、今や基幹システムも含めた企業のIT基盤自体も、デジタル変革における経営課題の解決と密接に関わっています。従来のように、CIOがスケジュールやコストといったオペレーションレベルで評価し意思決定するのではなく、CEOがITやデジタル投資が生み出す価値を軸に、戦略レベルで評価し意思決定すべきです。にもかかわらず、いまだに経営者はITにうとく、ITの責任者は経営にうとい。この両極をつなぎ合わせ、企業におけるデジタル化の本質が「Business Transformation with Digital = dX」であることを理解すべきだと思います。

 そして、ここまで解説してきたように「経営における時間軸の捉え直し」「ステークホルダーとの関係性の再定義」「求心力の源泉となるパーパスの設定」という3つのポイントで経営モデル変革をいかに推進できるかが非常に重要です。これまでは当然とされていた「中期経営計画を前提とした経営」、これを課題として捉え、いかに脱却し変革していくか――思考のフレームワークを総入れ替えするほどの発想の転換を行うような経営者自身の抜本的な変革が実現できれば、両極化の時代に即した新たな経営モデルを再構築できるでしょう。ポストコロナを生き抜くためのビジネスの未来図を描くために、今すぐこの変革にチャレンジすべきではないでしょうか。


参考文献:『SDGsが問いかける経営の未来』モニターデロイト編(日本経済新聞出版社)

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新たな経営モデルの3つの構えで「両極」をビジネスに生かす(前編)