パーパスこそが求心力

── 第3のポイントである「パーパス」は、こうした開放的なエコシステムを構築する求心力の源泉として重要ということでしょうか。

 そうです。今各地でさまざまに試みられているMaaSであれ、ループのようなリサイクル事業であれ、ステークホルダーとの関係性の再構築を伴うエコシステムにおいては、必ず「大義ある目的」が明示されています。社会的に深刻かつ重要な課題の解決をパーパスとして掲げることで、それに共感する多様な分野のプレーヤーを引き付け、それによってエコシステムを安定させているのです。言い換えれば、違うロジックや文化で動いている人たちとエコシステムを構築し、長期的に課題解決を担い合うには、求心力となる共通のパーパスが不可欠なのです。

 さらにこのパーパスは、経営における時間軸を捉え直す上でも重要となります。10年超という長期の時間軸で新たな将来像を描いても、推進していく途中で経営者が代替わりしている可能性が大いにあり得ます。日本の大企業では、むしろそのようなパターンの方が多いでしょう。経営者が代わっても同じ方向を向いて推進していかなければ、経営における時間軸を捉え直すことができません。一貫性を持って推進していくために、その軸となるものがパーパスなのです。

── 多くの企業が掲げるミッションや経営理念も「大義」といえると思います。パーパスとの違いは何でしょうか。

 ミッションや経営理念は自社を中心に「こうしたい」「こうありたい」という主観的な思いを表現することで、閉鎖系でつながったステークホルダーの帰属意識を高める効果を発揮する傾向がありました。一方、パーパスは、広く共有可能な「目指すべき社会像」と、その実現のために自社にできることを明示するものです。つまり、一人称の方向性や状態を示すものにとどまっているのか、それとも、ステークホルダーや社会全体といった第三者的視点から自社の果たすべき役割を俯瞰して定義付けしているのか、ここに大きな違いがあります。

 例えばユニリーバは「持続可能なライフスタイルが当たり前の社会を実現する」、テラサイクルは「捨てるという概念を捨てよう」というパーパスを掲げています。こうしたメッセージには、顧客や従業員、ビジネスパートナーはもちろん、これまでのビジネスでは接点のなかった多様なプレーヤーを巻き込み、同じゴールに向かわせる力があります。

 また、必ずしも自社が自ら旗を振ってエコシステムを構築しなくても、すでに形成されているエコシステムで役割を果たすという視点も重要です。複数のエコシステムで貢献することで複数の戦い方を磨くことは、自社が目指すビジネスの未来像により早く到達するための手段になるわけですから。国境をまたごうが、業界をまたごうが、系列をまたごうが、どのエコシステムに入るのも出るのも自由なのです。