●過度な心情的つながりは過大評価されている

 コーチングをしているときは、部下の目を見て、自分が全身全霊でそこにいることを示し、気まずい沈黙を破りたくなる衝動を抑えること。相手の発言に即答しようとすると、実際に話に出たこと、あるいは出なかったことを、あなた自身がきちんと把握できない可能性がある。

 そのようなとき、多くのマネジャーは自分の経験に結びつけて、「あなたの身にどんなことが降りかかったのか、わかります」と答えるという罠にはまるおそれがある。善意で言っているものの、相手はそのような発言で気分を害する可能性がある。多くのマネジャーがまったく的を射ていない発言をしていると、我々の研究結果でも示されている。

 心情的つながりを築こうとするあまり、思い込みでまったく未知の領域に踏み入ってしまうこともある(加えて、そうなる可能性は高い)。

 共感とは、自分自身では今まで経験したことのない感情であっても、誰かがどう感じているかを理解できるよう学ぶことである。それを忘れずにいよう。自分の個人的な経験に引き寄せ、他人はこのようなことを経験しているに違いないと頭の中で話をつくり上げることではないのだ。

 代わりに、「気まずい」と感じる沈黙の時間を捉え直すとよい。会話の意味を汲み取る時間、あるいは相手に考える余地を与えるための時間と考えるのだ。何と言えばいいかわからないのならば、あなたにはもっと多くの情報が必要なのかもしれない。

 ミッシェルと上司の事例では、上司はミッシェルの経験していることを理解したと伝えることで、彼女のフラストレーションを軽減しようとした。しかし、彼の意図とは裏腹に、不可能なことを憶測したことでミッシェルに疎外感を与えた。

 上司はその代わりに、ミッシェルが置かれた状況を深く理解するために時間をかけ、黙っているべきだった。そうすれば、もっと思慮深い返事を考える時間ができ、「そのときにあなたがどんな経験をしたかを想像することなんて私にはできないが、自分が誤解された状況で嫌な思いをした経験はあるので、その気持ちはわかります」というふうに答えられただろう。

 最後に、上司は何を求めているのかを尋ねることができたはずだ。似たような状況で自分ならこんなサポートが必要だと勝手に推測する代わりに、「あなたをサポートするために私にできることは何でしょうか」と問うとよい。

 あなたがこのような会話を通じて知りえたことは必ず極秘扱いとし、他のチームメンバーと共有するときは必ず事前に許可を得ることが重要である。これはあなたに対する信頼を築き、人間関係を維持する一助となる。