コーチングはマネジメントを成功させるための不可欠な要素であり、前述のような対話は生来とても個人的なものである。このような対話を通してリーダーは、チームメンバーとの関係を深め、チーム内で互いの違いに関する共通理解を促し、広範にわたるインクルージョンの土台を築けるはずである。

 ただし、そのために組織内のあらゆる階層のリーダーは、自分とは異なる人々と接する際の最善のアプローチを計画的に準備しておく必要がある。

 問題は、多くのマネジャーは準備も計画もできていないということだ。

 金融サービスや専門職サービス、医療業界など全米各地の50社で働くリーダーを対象に我々が行なったアンケート調査とインタビューから、気がかりな発見があった。マネジャーは1対1のコーチングの対話に臨む際に、何の戦略もなく、それを重視さえしていなかったのである。

 たった1回の会話で、組織やチームレベルで仲間として受け入れられていると実感しやすくなる土台を築くことができる。我々はこれを、アウトサイダーがインサイダーになるのを助けることだと言っている。にもかかわらず、権力を持つ立場の人たちの間で、あるいは職場の多数派に属する人たちの間で、そのような認識がない。

 リーダーたちに、自分とは違う人々を(その違いが人種であれ、宗教であれ、民族性であれ、性別であれ)コーチングするとき、どんな態度を示すのが重要だと思うかを尋ねたところ、彼らの答えは一貫して漠然としていた。

・「自分には死角があると認識するよう努めている」
・「話し合いを始める前に、この話し合いをどう進めていくか、何を期待しているかを明確に設定している」
・「自分の価値観を押し付けないように努めている」
・「思い込みをしないようにしている」

 最も顕著で、よく耳にする返答には、次のような感情が見え隠れしていた。「もし私が心情的なつながりを築けないなら、別の誰かに任せればいい」

 多くのリーダーが、他人任せにするのはなぜだろうか。

 つながりを築くのに時間がかかりすぎると思っているせいかもしれないし、何か間違えたことを口にして人事部でやり玉に挙げられるのを恐れているせいかもしれない。そのような会話をうまく進めるために不可欠な「ソフトスキル」、またはEQ(心の知能指数)を開発できていないせいかもしれないし、気まずい状況を避けたがるせいかもしれない。

 それぞれの回答の背後にある動機を我々が推測することはできない。しかし、我々が話をしたリーダー全員が同意しているのは、的確なパフォーマンスコーチングができれば、業績およびチームの士気は向上し、組織の人間性も向上されるという点だ。パフォーマンスコーチングを行う場面は、正式な人事評価のミーティングかもしれないし、何かの学習の機会かもしれないし、結果に関する話し合いかもしれない。

 リーダーたちのこの認識は正しい。すべての従業員がそれぞれ違うという前提で、自分の存在を認められ、理解され、自分のままで安心していられるような組織は、高い創造性やイノベーション、業績を発揮している

 問題は、日々のコーチングにきちんとした方向性がなかったり、おざなりだったり、バイアスがあったりする場合、企業は真のインクルーシビティを達成できないことである。そして、そのような状態の企業が少なくないことが、我々の研究で明らかになっている。

 インクルーシブな職場環境をつくるためには、マネジャーは自分の死角を認識するだけでは十分ではない。少なくとも、生産的かつ思慮深く会話を交わすための最良の方法について、教育を受ける必要があるだろう。チームメンバーと真のつながりを築き、有益な方法で答えるためによりよいアプローチを学ぶべきなのだ。

 我々は研究を通して、リーダーたちが出発点として使えるベストプラクティスのいくつかを集めた。以下に紹介しよう。