複雑に絡み合った問題を抱える患者にとっては、信頼と対面診療がいっそう重要だ。米国では人口の5%が医療費の50%を占めている。疾病を抱え、病弱な人は、糖尿病や心臓病、高血圧、関節炎、認知症、うつ病など、複数の症状を発症することがよくある。これらの症状は絡み合っていて、最高の状況の下でも対処が困難であり、画面上ではなおさらだ。

 こうした患者を支援するカギは、症状が現れたときに病院に行かなくても済むようにすることだ。しかし、医師と患者が十分な自信を持って経過観察ができるかどうかは、両者が親しさと信頼に基づく過去を共有しているかによる。

 遠隔医療が完全に理にかなっている時と場所はある。対面での人との接触を制限しなければならないパンデミックの間は、遠隔医療は医師と患者とのつながりを維持するために極めて重要だ。他に選択肢がない米国の一部の地域では、特に遠隔地のかかりつけ医を支援する専門的なサービスを提供することで、遠隔医療が命を救ってきた。

 また、遠隔医療が対面よりも利便性が高く、コストの低い優れた治療を提供できる状況もある。たとえば、(新型コロナウイルス感染症にもかかわらず)軽度の呼吸器症状や血圧のモニタリングなど、日常的で繰り返して行うこともそうだ。一部の精神衛生状態に遠隔医療が有効であるという裏づけも増えている。そして、遠隔医療は高齢者や病気の人よりも、若くて健康的な人にとってより役立つ可能性がある。

 主要な健康のパラメーター(心拍、血糖値、体重、呼吸数など)を遠隔でモニタリングする技術は、患者が慢性症状を管理しやすくなり、臨床医の診断と治療に役立つかもしれない。これに人工知能を組み合わせることで、新たな可能性が開かれる。

 この数ヵ月は、医師と患者にとって、遠隔医療の短期集中コースのようなものだ。こうした経験によって間違いなく、その技術は発展し、活用しやすくなる。

 しかし、遠隔医療は、人と、そのニーズに適応したときに最も効果を発揮するのであり、その反対ではない。遠隔医療は、病気のときにいつも私たちを支えてきた人間関係や、思いやりのある医師の目、耳、手を基盤にし、またそれらを促進する一つのツールであるべきだ。


HBR.org原文:Where Telemedicine Falls Short, June 30, 2020.


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