(1)子どもに委ねる

 親は本能的に、子どもに命令する。物事をよく知っているのは親であり、命令するほうが簡単であり、議論する時間の余裕などない。そして、親のほうがたいてい正しい。家族という制度が何にも増してウォーターフォール・モデルなのには、しかるべき理由があるわけだ。

 しかし、どの親でもすぐに気づくことだが、子どもに同じことを何度も繰り返し言い聞かせるのは、必ずしも最善のやり方ではない。

 我が家におけるアジャイル手法の経験を通じての最大の学びは、なるべく頻繁にウォーターフォールを逆にすべしということだ。機会があればいつでも、子育てに子ども自身を参加させるのだ。

 この結論は、脳に関する研究でも支持されている。

 カリフォルニア大学などの科学者らの発見によれば、子どもが自分で時間の使い方を計画し、週次目標を設定し、取り組みをみずから評価した場合、前頭前皮質をはじめとする脳部位――生活における高度の認知制御を助ける部分――が発達した。この「実行能力」と呼ばれる機能は、子どもの自制心、集中力の維持、選択肢の良し悪しの判断を後押しする。

 そして、自分へのご褒美と罰をみずから決めることで、内発的動機が高まる。

(2)親は完璧ではない

 親が持つもう一つの本能は、(子どものために)自分を鍛え、何でも解決できる存在になろうとすることだ。しかし多くの根拠によって、この種のリーダーシップは、もはや最善ではないことが示されている。

 研究者らの発見によれば、卓越したビジネスチームはカリスマ的なリーダーに支配されてなどいない。むしろ、特に有能なチームでは、メンバー同士でもメンバーとリーダーの間でもできるだけ多く話し合い、定期的に顔を合わせ、皆が均等に発言する。

 もう、おわかりだろう。デイビッド・スターはこう話してくれた。「家族会議を機能させるポイントの一つは、子どもたちに何でも言いたいことを言わせることです。大人たちについて発言してもいい。僕が出張から戻って、いつもの日課になかなか戻れずにいるときや、ママが今週は優しくなかったときなどに、この場なら子どもたちは安心して不満を表明できるわけです」

(3)柔軟性を取り入れる

 もう一つ親にありがちなのは、重要なルールをいくつか設け、それを永久に守らねばならないと考えることだ。この方針の根底には、今後何年もの間に生じる問題をすべて見越しておくことができる、という仮定がある。

 それは不可能だ。ハイテク分野で重視される信条に、「今日やっていることが6ヵ月前と同じならば、それは何かが間違っている」というものがある。親はこの思想から多くを学ぶことができるはずだ。

 アジャイル家族という理念は、常に変わりゆく家族生活のあり方を認め、受け入れるものである。

 これはもちろん、甘やかすという意味ではない。皆に対して負う説明責任を考えればわかるはずだ。そして「何でもあり」なわけでもない。ただし、どれほど巧みに設計されたシステムでも、途中で見直す必要が生じるということを見込んでおくのがアジャイル家族である。

***

 私はスター宅からの去り際、エレノアに尋ねた。初のアジャイル家族から私が学ぶべき、最も重要な教訓は何か、と。

 彼女はこう答えた。「メディアでは、家族は単にあるがままのもの、その状態に"なる"ものとして扱われます。でも、それでは誤解を招きます。人は仕事があれば、その仕事に努力しますよね。庭でも、趣味でも、その対象に労力を注ぐわけです。家族にも、同じように努力を注ぐ必要があります。自分の家族をよりよくするために、常に努力を続けるという強い決意と覚悟を持つこと。これが、アジャイルから私が学んだいちばん大事なことです」

 どんな状況にあり、どんなストレスに直面していようとも、幸せな家族になる――そのための秘訣は何だろうか。

 それを目指すことである。


HBR.org原文:The Agile Family Meeting, June 26, 2020.


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