●恐怖心は怖くも恥ずかしくもない

 私たちの社会では、怖いもの知らずであることが立派だとされる。リーダーといえば、賢く、たくましく、恐れを知らない人というイメージがある。

 しかし、恐怖心には他の感情と同じように、進化するという目的や長所がある。失敗するかもしれないと気がかりになるのは、自分が難しい状況に立たされていることを忘れないためだ。

 慎重なリーダーには価値がある。いまのような時期には、特にそうだ。そのため「こんなに怖がっていてはならない」と、夢中になって自分に言い聞かせる必要はない。

 失敗を恐れることを恥じたり、それによって怖気づいたりしてはいけない。また、だから自分は優柔不断なリーダーであるとか、大胆さや新しいことに挑戦する気持ちがないとは思わないことだ。

 生まれつき予防焦点の傾向があるならば、それを大胆さや挑戦心に転化しよう!(半信半疑の人は、この通りに行動して災難を回避したリーダーたちを思い出してほしい)

 ●エモーショナル・アジリティを発揮する

 失敗を恐れると、人は動けなくなる。この麻痺状態を防ぐのが、エモーショナル・アジリティ(情動の敏捷性)だ。

 まず、自分の考えや気持ちをラベリングする。たとえば、「顧客を十分にコントロールできず、スタッフの安全を守れないかもしれないと不安を感じている」。不安は口にするとやわらぐ。暗い部屋で電気を点けるようなものだ。

 次のステップでは、現実を受け入れる。たとえば、「私は、人が必ずしも自分の思い通りに動かないことを理解している」。受け入れるべき事実を一つひとつ列挙しよう。

 そして、自分の価値観に従って行動する。たとえば、「実直さ」に重きを置いているとしよう。いまの状況に当てはめると、どうなるだろうか。社員一人ひとりがフィットするマスクを着用しているかを確認したり、不満を吐き出しやすい空気をつくったりといったことが考えられる。

 危機における意思決定に最も重要だと思う価値観を5つ挙げよう。それから、いま下さなければならない重要な決断に対して、それぞれがどのような意味を持つか考えよう。

 このプロセスを、いま抱いている不安の一つひとつに対して実施すること。そうすると、どれが最善の道かはわからなくても、行動を起こさなければならないときがあることを受け入れ、不確実性をゼロにしようとする、よくある不安の罠を回避できる。

 ●プロセスに目を向ける

 心配は、やり方によっては判断力を高める。しかし、ほとんどの人はそれをやっていない。心配するときは解決策に関して思案すべきであり、ただ漠然と脅威の存在に怯えるべきではない。

 その心配を、失敗の確率を現実に減らす行動に転化しよう。人がコントロールできるのは、結果ではなくシステムだ。自分には、失敗しないための体制やプロセスは整っているだろうか。心配の感情を次のような質問に向けよう。

 データは信用できるのか。欠点は何か。そのシステムでは、どのように集団思考を回避するのか。盲点に気づくために、どのような手順を設けているか。声なきステークホルダーの貴重な意見を見過ごさないためにどうするか。ある判断が想定外の結果や影響をもたらした場合、迅速に問題に気づき、修正するためにどのようなプロセスを設けているのか。