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新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、病院はこれまで以上の頻度で重篤な患者への対応を迫られるようになった。なかには、延命が難しい患者も少なくない。医師たちにとって、その事実を伝えるのは辛い仕事だ。しかし、最期の別れを妨げないためにも、医師は患者の希望を把握して、家族との話し合いを持つことが重要である。


 私は緩和ケアの医師で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで最も深刻な打撃を受けた州の一つニュージャージー州にある、RWJバルナバ・ヘルスの老年医学および緩和ケアサービスを指揮している。

 数週間前、この州で感染者が急増し始めたとき、系列病院の一つであるニューアーク・ベス・イスラエル・メディカルセンターのICU(集中治療室)担当医が助けを求めてきた。重体の患者の予後について話し合うために、患者の家族に電話をしてほしいという。私はその患者と25年間付き添った妻に電話をかけた。

 多くの医療システムと同じように、私たちの病院も新型コロナウイルスの患者の面会を禁止していた。これには公共の安全を確保するための十分な理由があるが、患者のベッド脇に家族がいないということだ。また、自宅にいる家族はとてつもなく離れ離れになっていると感じ、電話が鳴るのを不安げに待っている。

 患者の妻は私からの電話に感謝していたが、私が伝えなければならないことは残酷なものだった。

 彼女の夫が新型コロナウイルスに感染し、肺炎を患っていると私は伝えた。さらに、彼が入院中に重度の脳卒中を起こし、ICUで彼を診断した神経科医と脳神経外科医がこれ以上できることはないと言ったこと、完全に回復することはなく、元に戻ることはないと思われることも説明した。私は彼女に、彼は長くないと思うと告げた。

 仕事柄、これまで何度も悪い知らせを伝えてきた。今回は家族の手を握ったり、水やティッシュを差し出したりすることができなかった。それは辛いことで、現場の医療チームを讃えたい気持ちにさせた。私が話したことを患者の妻が「どのように」処理したのかを知る術はなかった。

 彼女が返してきた言葉を、私は受け入れる準備ができていなかった。「ありがとうございます、先生。状況が悪いことはわかっていて、もっと知りたいと思っていました。ニュースをずっと見ているんです。決断をしなければいけないかもしれないと、わかっていました。電話をいただけてよかったです」