(4)社員の支援に関して、リーダー、マネジャー、同僚を訓練する

 円滑な職場再開を実現するために大きな責任を担うのは、リーダーとマネジャーだ。

 私たちの顧客企業の中には、バーチャルな「職場再開のための訓練プログラム」への参加を、自社のリーダーとマネジャーに義務づけることを検討している企業もある。曖昧な状況への対処、個人レベルのレジリエンス(再起力)と感情的知性(EI)の涵養、ハイブリッド型チームの主導といったテーマを扱う。

 訓練プログラムでこうした知識を得ることにより、マネジャーは適切な行動を実践し、チームのメンバーにも好ましい行動を教えて、新しい働き方を支援することができる。

 人事担当のマネジャーは、社員の健康を守るために、ひときわ大きな責任を負っている。具体的には、人が情緒面で苦痛を味わっている兆候を見分けられるようになったり、部下の様子を見るために割く時間を増やしたり、コントロール可能なこととコントロール不可能なことをメンバーに伝えたり、次々と持ち上がる問題に対して、新たなリソースの投入を待つ間、対応の優先順位を判断したりしなくてはならない。

 社員が公式・非公式の支援ネットワークを通じて、職場の同僚と再び交流できるようになれば、不安はいっそうやわらぐ。隔離とソーシャル・ディスタンス(社会的距離)が求められるようになって、働く人たちは、以前であれば厳しい状況を乗り切る助けになったような支援システムと対応メカニズムを奪われてしまった。

 社員は誰でも、ニュー・ノーマル(新たな常態)に対応するために、共感と思いやりの精神を持って、同僚同士の結びつきの場をつくるべきだ。その場は、バーチャルなものでもよいし、(1.8メートルの対人距離を取れば)リアルな場でもよい。

(5)柔軟に対応する

 私たちが行った大掛かりな実験によれば、少なくとも一部の業種では、自宅で仕事をすることが可能というだけでなく、一人ひとりが好む勤務時間帯や各自の私的な事情に合わせたスケジュールで働くことも可能だとわかってきた。

 職場を再開したあとも、このような柔軟な働き方を継続したいという社員の声はなくならない。特に育児や介護をしている社員の間では、そうした要望が強いだろう。「もしコロナ以前のような働き方に戻れなければ、献身が足りないと思われたり、最悪の場合、職を失ったりしないだろうか」と、心配する人も多いかもしれない。

 社員の不安をやわらげたいと考える企業は、こうした問題にどのように対処すべきかを話し合い、考え方をすり合わせておくとよい。具体的には、以下の問いを検討すべきだ。

・ツイッターやフェイスブック、保険会社のネイションワイドなどの例にならい、リモート勤務への大幅な転換に踏み切るのか。

・もしそうしないのであれば、さまざまなタイプの社員に、それぞれどのくらい自由に出勤再開の時期を選ばせるのか。

・在宅勤務に関する方針の全面的な再検討を準備しているのか。

・在宅勤務も選択可能な真のハイブリッド型の職場をつくるうえでは、どのような調整が必要なのか。

・リモート型もしくはハイブリッド型の職場に転換しつつ、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン (包摂)を今後も重んじ、しかも、オフィスに出勤しない社員たちに想定外の悪影響が及ばないようにするには、どうすべきなのか。

・高齢の社員、持病のある社員、子どもがいる社員、コロナ禍で特に大きな打撃を被っている層の社員が不当に不利な扱いを受けないようにするには、どうすればよいのか。

 コロナ禍で社員の身体的健康を確保するための計画を立てる際は、社員の心理的健康への影響も忘れてはならない。このような状況で高まる不安は、疲労、集中力の低下、アルコールやたばこや薬物の使用量の増加、そして持病の悪化などを引き起こす場合がある。これらの要素はすべて、仕事のパフォーマンスを落ち込ませかねない。

 本稿で挙げた5つの行動を取るのは、道義的に正しいことだ。しかし、このような行動を取るべき理由はほかにもある。いまのような時期に企業が社員の健康に関わる要素すべてに注意を払っているか否かは、将来にわたって会社の評判にも影響するのだ。


HBR.org原文:Help Your Employees Manage Their Reentry Anxiety, June 24, 2020.

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