こうした研究結果を踏まえて「なぜ現実に企業は、株主に不評になることが予想される取締役を任命するのか」と問うことには意義がある。この質問の答えは、少なくとも2つ考えられる。

 まず、CEOは取締役会に有能な取締役を選びたがらない可能性がある。1932年にアドルフ・バーリとガーディナー・ミーンズの『現代株式会社と私有財産』が出版されて以来、経営トップは取締役の選出プロセスに影響力を及ぼすことで経営陣に友好的な取締役会を確保し、企業をコントロールし続けることができると経済学者は論じてきた。

 あるいは、行動バイアスが原因で、経営陣はアルゴリズムほど効果的に有能な取締役を選ぶことができないとも考えられる。ダニエル・カーネマンは著書『ファスト&スロー』で、心理学研究の長い歴史において、個人の裁量に決定を委ねるよりもシンプルなルールに従うほうが、多くの状況においてよい結果を生むことが実証されていることを指摘している。

 機械学習モデルは、心理学者が実験で使ったルールよりもはるかに精緻なルールのもとで運用されているものの、ルールが個人の裁量よりも優れた意思決定を可能にするという概念を実証する貴重な手段になりうる。

 実際、今回の研究結果をどのように応用できるだろうか。私たちが提供したアルゴリズムは「一次通過」として扱うべきだろう。本稿のモデルよりさらに精緻なモデルを使えば、より的確に取締役のパフォーマンスを予測できるだろう。

 加えて、私たちのアルゴリズムは公的に入手できるデータにのみ基づいている。もし取締役の経歴やパフォーマンスなどについて、より詳細な非公開データが入手できるのであれば、アルゴリズムの正確性はさらに向上するだろう。将来、こうしたアルゴリズムが実際に使用されるようになれば(おそらくそうなるだろう)、ビジネスの現場では間違いなく、私たちよりもずっと適切なデータを入手し、取締役のパフォーマンスをより正確に予測できるはずだ。

 機械学習のアルゴリズムにも欠点はある。アルゴリズムもまた、どのようなデータを与えられるか、どのような結果を最適化すべきかによって、バイアスがかかるからである。

 だが、今回の研究目的という点では、アルゴリズムは株主と経営陣の間で起きるエージェンシー・コンフリクトや、取締役会とCEOが一緒に新しい取締役を選ぶときに生じるバイアスに陥りにくいことは明白である。機関投資家にとってこの特性はとりわけ魅力的であり、将来の取締役を選出する段階でアルゴリズムの利用を取締役会に勧める可能性もあるだろう。

 ただし、このアプローチが経営陣にどの程度受け入れられるかは、まだわからない。

HBR.org原文:Research: Could Machine Learning Help Companies Select Better Board Directors? April 09, 2018.


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