第2の課題は、実際に選出されて取締役会入りした人物のパフォーマンスしか基準にできないことだ。

 機械学習の最大の強みは予測である。ただし、選出された取締役が株主による再任決議でどう評価されるかだけを予測するなら、問題の半分しか見ていないことになる。理想的には、最終的に推薦されなかった候補者が取締役会に加わっていたとしたらどうなったかも予測したい。

 この問題については、それぞれの取締役会について候補者のプールをつくることで対応した。そのプールは、近隣にある規模の小さな企業で、同時期に取締役を引き受けた人々で構成される。彼らにとって、近くにある自社より大きな企業の取締役は魅力的だろうと想定した。研究のために、彼らが実際に取締役になった企業での得票率を、潜在的パフォーマンスの基準として用いた。

 こうして私たちは、取締役のパフォーマンスを予測できるよう機械学習のアルゴリズムを訓練した。訓練には、2000年から2011年までの米大手上場企業のデータセットを使い、勾配ブースティングと呼ばれる手法を採用した。そしてその結果を、アルゴリズムが「訓練期間」に観察しなかった、2012年から2014年に取締役となった人物に関する別のデータセットを用いて評価した。

 アルゴリズムは、どの取締役が株主に評価されないかを予測することができた。

 選任された取締役のうち、アルゴリズムで株主に不評になると予測された取締役は、実際に他の候補者よりもはるかに結果が悪かった。対照的に、アルゴリズムでよい結果を予測された取締役は、実際に他の候補者よりもよい結果を出した(私たちの機械学習モデルは、最小二乗法といった標準的な計量経済モデルと比較して、ずっと精度が高かった)。

 アルゴリズムが推薦する取締役と、実際に企業が選出した取締役を比較すると、取締役候補を選ぶ過程で過大評価されがちな特徴が浮き彫りになる。企業に選ばれやすいのは、男性で、広い人脈を持ち、取締役としての経験が豊富で、現在も複数の企業で取締役をしており、財務のバックグラウンドを持つといった条件を満たす人物だった。

 ある意味で、アルゴリズムが明らかにしたのは、まさしく法人株主が長年、主張し続けてきたことだった。つまり、経歴が異なり、経営陣の旧友ではない人物は、経営陣を監視する能力に優れていても、取締役には選ばれにくいのだ。