コロナショックこそ事業を創出する組織づくりのチャンス

 いま、世界がコロナショックという大きな不確実性の中にあるが、上記に挙げたような問題を解決するには、むしろまたとない好機ともとらえられる。意思決定プロセスを一から見直し、経営のスピードアップを図る改革に、いまほどステークホルダーの合意を得やすいタイミングはないからだ。

 多くの経営者はコロナショックを危機とみなして守りを固めようとしているが、不確実性が高い状況だからこそ、新たなニーズを取り込んで社会価値やビジネスチャンスに変えていく攻めの視点が重要になる。シャープがいち早く液晶工場にマスク生産体制を築き、供給を実現したことは注目を集めた。どうやってあのスピードで実現できたのだろうかと筆者にも問い合わせが寄せられた。

 ポストコロナの世界を正確に予測することは難しいが、社会全体で「ニューノーマル」を構想して、アジャイルにトライアルを繰り返し、実現していくことは多くの大企業にとっても、これまでの「自社らしさ」に縛られず、生活者の課題に向き合い自社の提供価値を再設計するチャンスになるはずなのだ。

オープンイノベーションからビジネスプロデュースへ

 筆者は、オープンイノベーションという言葉を好ましくないと感じている。なぜならば、いまフォーカスすべきは、手段が目的化しがちなオープンイノベーションではなく、短期(たとえば1年以内など)での事業化というゴールに向かって走る「ビジネスプロデュース」であるからだ。オープンイノベーションブームのような言葉に振り回されず、ビジネスプロデュースとの違いを明確に捉えてほしい。

 このポイントについて、オープンイノベーションとの比較によって表したのが図3である。目的、ヒト、マネジメント、目標、結果を軸に整理しているが、とりわけ重要なのはヒトの軸で捉えた「”聖域なき”社外活用」だ。つまり、「Thinker」中心で同質性の高い社内メンバーだけでなく、社外から起業家を含むタレントを広く集め、ベストチームを組むのである。

 新規事業は「未来のコンセプトの卵」である。その卵が孵化し、成長するにともなって、既存事業や全社そのものに大きなフィードバックをもたらす。それ故に、「未来のコンセプトの卵」が実業に裏打ちされたリアリティのあるビジョンであれば、組織の旧態依然とした意識を変えていくことができる。そして、ビジョンに呼応した人が社内外で集まることで、推進力は加速度的に増していくのだ。

 オープンイノベーションから脱却し、ビジネスプロデュースに取り組むことで、企業は未来の顧客の人生を豊かにするためのビジョンを打ち立てることができるはずだ。