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在宅勤務が続き、ビデオ会議で常態となることで、プライベートな空間が同僚やクライアントの目にさらされることになった。これは黒人ビジネスパーソンにとって、独特の悩みをもたらしている。部屋の広さやアートワークなどアイデンティティに関する情報が公になることで、人種へのバイアスが助長されるリスクがあるのだ。リーダーはそれを防ぐために、インクルーシブ・リーダーシップを実践すべきである。本稿では、そのための3つのポイントを紹介する。


 新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるため、在宅勤務が推奨されるようになった結果、ビジネスパーソンは新たなチャンスと問題に直面することになった。

 多くは、自宅で仕事とプライベートの境界線をどう引くかに悪戦苦闘している。同棲中のカップルは、互いの「職場」に踏み込むことになった。オンライン会議中に子どもが飛び込んでくるのではないかと、冷や冷やしている人もいる。高齢の家族の世話をしなければならない人もいる。誰もが、いつ、どのように仕事をするかについて見直しを強いられてきた。

 米国では、プロフェッショナルな仕事に従事する比較的限られた数の黒人ビジネスパーソンが、「自分らしさ」をどこまで露出すべきかという、ユニークな問題に直面している。こうした職種では、黒人が占める割合は小さいことが多い。彼らにとって、プロフェッショナルなイメージを傷つける、人種的なステレオタイプにどう対応するかは、ふだんから悩みの種だった。

 そこで黒人ビジネスパーソンがとる戦略の一つは「コード・スイッチング」だ。環境によって話し方や外観、行動を変えることによって、より公平に扱われ、より質の高いサービスを受け、より大きなチャンスを得ようとする試みだ。複数の研究では、黒人は人種的アイデンティティをあまり表に出さないほうが、プロフェッショナルと受け止められ、採用される可能性が高いことがわかっている。

 コード・スイッチングは、専門職に就く黒人ビジネスパーソンが、仕事とプライベートの間に、デリケートな境界線を引いて自分を守ることを可能にしてくれる。それは、職場で異なる人種とスムーズに交わることができると同時に、プライベートな領域では文化的なアイデンティティを維持できる。

 ただ、コード・スイッチングには犠牲が伴う。これを実践する黒人ビジネスパーソンは、燃え尽きや、認知能力の消耗や、黒人同僚からの反感を覚えるという。また総じて、黒人ビジネスパーソンは、職場で同化圧力を感じるがゆえに、自分らしさを抑えているという。

 最近の在宅勤務のトレンドは、黒人ビジネスパーソンに新たな難題を突きつけている。もはや、人種的アイデンティティを表現するプラス面とマイナス面を検討して選択する余地はない。なにしろ、自分のプライベートな生活空間に存在する、アイデンティティを示唆するようなヒントを、文字通り生放送しなければならないからだ。