ケーススタディ(2)思いやりを持って手を差し伸べる

 人材派遣・紹介や企業文化の構築などを手掛ける全米規模の企業であるラサール・ネットワークのシルマラ・キャンベル最高人事責任者は、コロナ禍の影響で勤務評価のあり方が変わったことは間違いないが、追求すべき目標は変わっていないという。

 勤務評価の意義は「部下に成長の機会を与えられること」にあると、キャンベルは言う。そして、部下が成長できれば、それが会社の成長につながるというわけだ。「ストレスが高まっているときでも、有益なフィードバックを行い、社員と会社が前に進めるようにすることを忘れてはならないと思います」

 キャンベルにとって印象深いのは、「ジョン」(仮名)という社員との面談だ。コロナ禍以前、ジョンは安定して高い成績を挙げていた。しかし、リモート勤務に移行すると、様子が変わってしまった。

「ジョンは、同僚たちと緊密に連携して働くことで成果を挙げるタイプでした。同僚との関係を通じて、いろいろなことを学んだり、やる気をかき立てられたりしていたのです」と、キャンベルは言う。

「それが突然、全面的なリモート勤務に転換しなくてはならなくなった。しかも、リモート勤務ははじめての経験でした。ジョンは大きな転換を余儀なくされました。修正しなくてはならないことがたくさんあったのです」

 キャンベルは、ジョンの成績が落ち込んだ理由を知るためにもっと情報が欲しかった。そこで、直属の上司に話を聞いた。

 すると、事情がわかった。コロナ禍で子どもたちの学校が休校になり、ジョンはフルタイムの会社員であるだけでなく、フルタイムの親という役割も担わなくてはならなくなったのだ。「ジョンの上司と私は、厳しい状況がよく理解できました。ジョンやほかの社員たちは、なんの準備もなく新しい状況に放り込まれたのです」

 四半期ごとの面談でジョンと直属の上司とキャンベルの3人がビデオ会議で話し合ったとき、その問題への対策が取られた。「私たちは、ジョンがいろいろ大変な状況にあることに理解を示しました」と、キャンベルは振り返る。

「このようなことがあるからこそ、評価対象期間全体を見て評価を下すことが重要です。コロナ禍以前の成績も見る必要があります。直近の出来事に判断を左右されすぎる落とし穴にはまってはなりません」

 キャンベルは、ジョンに対するメッセージ全体を通じて、会社の目標とは別に、個人単位の目標を設定するよう促そうとした。「オフィスで勤務していた頃と違って、締め切りをすべて守るのは無理でしょう。そのことはわかっていると、本人に伝えました。けれども、それと合わせて、ジョンなら達成できると私たちが期待している内容も伝えました」

 直属の上司とキャンベルは、ジョンに支援を申し出た。「私たちが支援を惜しまないこと、そして、私たちが彼を見放したりしないことを知ってもらいたかったのです」

 この日の話し合いにより、勤務時間を調整することになった。仕事をしっかり行いつつ、家族と過ごせるようにしたのだ。ジョンは、勤務時間の柔軟性が高まることを歓迎した。

 1週間後、キャンベルと直属の上司は再びジョンと面談を行った。すると、ジョンは新しい勤務スケジュールにはまだ慣れていないけれど、以前より働きやすくなったとすでに実感していた。

 キャンベルも、この面談の成果に満足している。「マネジャーは、部下と透明性のある会話ができなくてはならないと思う」と述べている。


HBR.org原文:How to Do Performance Reviews--Remotely, June 15, 2020.


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