実例からのアドバイス

 ケーススタディ(1):成績優秀な部下には高い評価を伝える

 住宅ローン関連ソフトウェアの会社であるエリー・メイで、社内コミュニケーション担当のシニアディレクターを務めるサラ・ホルツは、前年の仕事ぶりについて部下の勤務評価の面談をすでに終えていた。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、同社の人事部門責任者から新しい指示があった。ホルツのような現場レベルのマネジャーたちには、部下の成績と能力開発に関してもっと頻繁に面談を行うよう促されたのだ。

「このような前例のない状況下で、マネジャーとして私がすべき重要なことは、適切なトーンを打ち出すこと、そして目に見える形で、積極的にメンバーを支援することだと思います」と、ホルツは言う。

「メンバーがこの信じ難い状況に適応しながらも成長できるように、手助けをすること――それが私の目標なのだと、みんなに知ってもらう必要があります」

 最近、ホルツがある部下(以下では「ジェニファー」と呼ぶことにしよう)と交わした会話は、とりわけ参考になる。ジェニファーは長らく、ホルツのチームで最も高い成績を挙げていた。最近は、通常の任務の範囲を超えた役割も担っている。ホルツは、そうした特別な尽力がきちんと評価されていると、本人に知ってもらいたいと考えた。

 ところが、ビデオ会議システムで話すと、ジェニファーの感じていることがわかった。コロナ禍が始まって以降、休息らしい休息もなく働き続けていて、押し潰されそうに感じ、燃え尽きの一歩手前まで来ていたのだ。そのうえ、同僚たちとバーチャルな方法でコミュニケーションを取ることにも苦労していた。

 ホルツは、ジェニファーの苦境がよくわかった。そこで、必要な資源と支援と提供することを申し出た。「少し休んだほうがよいと勧めました」と、ホルツは振り返る。「いま厳しい状況にあることはわかっていると、はっきり伝えました。また、それに加えて、私たちが彼女のことをどれほど高く評価しているかということも話しました」

 ホルツはジェニファーに、いま会社の目標が変わりつつあることを説明した。そして、彼女自身の将来の目標を決めるよう促した。

「2019年の勤務評価について面談をしたときとは、世界の状況がまるで変ってしまいました」と、ホルツは言う。「新型コロナウイルスの影響と全面的なリモート勤務の導入により、私たちの役割と求められることが変わりつつあるのです。それは、ジェニファーの職業人生にどのような意味を持つのか。本人がその点を考えるのを助けたいと思ったのです」

 この面談は、ジェニファーが今後も成長し続けて、会社に貢献するためにどうすればよいかについて、充実した話し合いの機会になった。「私たちはみな生身の人間です。会社やリーダーや同僚に対して強い結びつきを感じるときほど、生産性とエンゲージメントが高まります」と、ホルツは言う。

「どのみち、ビジネスは続く。それでも、みんなが一人ひとりの困難を理解し、しかも成果を挙げることを重んじる姿勢を共有することの意義はとても大きいのです」