舞台としての店舗

 今日、エッセンシャルな分野の店舗を訪れると、接触や人混みを減らすための間に合わせの対策が多く見られる。床に貼られたテープや透明なシールド、カラーの印刷用紙に手書きした貼り紙などだ。これらの対策は安価で簡単だが、不安を軽減し、顧客の心理状態に対処する効果はほとんどない。

 エッセンシャルな分野以外の小売業は、サービスとしての空間について考える必要がある。つまり、「表方」は落ち着いた雰囲気ながら、「裏方」は舞台上の複雑な動きをサポートする、パフォーマンスだ。

 2019年秋、私のチームはタッパーウェアのポップアップショップTupp Soho(タップ・ソーホー)をデザインした。商品に触れることも陳列棚を補充することも、人混みもない買い物体験ができるものだ。

 棚に並ぶのは展示用の商品で、商品を購入するにはモバイル決済のスクエアを搭載したタブレットを持つスタッフをつかまえればいい。支払いが完了すると、スタッフは「バックステージ」から商品を取り出して包装し、ショッピングバッグ(再利用できるトートバッグ)に入れてくれる。

 訪れた人は、ミュージアムのように店内を見てまわり、大きな商品を持ち歩かずに買い物ができる。このようなホスピタリティから生まれたサービスは、ラグジュアリーなショップではすでに見られるが、テクノロジーを活用して他の分野に拡大しない理由はない。

 さらに、非接触型の買い物がニューノーマル(新常態)になることを考えれば、小売業は、同様のサービスをすでに提供している他の業界に目を向けることを検討すべきだ。

 19時半にディナーの予約ができるなら、なぜその近所で18時半に買い物の予約できないのだろう? ヨガスタジオからセラピストまで、さまざまなビジネスがデジタルの予約システムを導入している。ちょっとした買い物のために、ソーシャル・ディスタンスを確保した長い列に並ぶのは敬遠されるだろう。