筆者らの研究はコロナ禍の前に行われたもので、「雇用上の脅威に直面した人が、自分のネットワークを活用するとき、その社会経済的な地位が何らかの影響を与えるか」を検討した。具体的には、大規模な全国調査の結果を分析し、ある実験を行うことにより、脅威にさらされた人が友人や家族や知人のネットワークを思い出すにあたり、経済状況の違いが与える影響を調べた。

 そのうえで筆者らは、今回の危機のユニークな課題を検討する。すなわち、人と物理的な距離を置かなければならない環境で、どうすれば社会的つながりを強化し、そこからサポートを引き出すか、である。

 コロナ禍で仕事を失った2人の女性の対応を考えてみよう。

 アリゾナ州立大学を卒業して、マーケティング・テクノロジー企業スチューデント・ビーンズに就職したブリアナ・デービスは、コンテンツクリエイターの仕事を突然クビになった。

 彼女はすぐにそのことを、リンクトインの自分のネットワークに報告した。すると、慰めや励ましのメッセージとともに、業界のコネクションがいくつか見つかった。筆者らはこの対応を、「拡張(widening)」と呼ぶことにする。ごく親しい仲間を超えて、自分のネットワークを拡張するからだ。

 タラ・バーンズは、クリーブランドにあるレストランの料理人だったが、コロナ禍で店が休業に追い込まれた。彼女はそれを、ごく親しい仲間にだけ知らせた。タラが「第2の家族」と呼ぶマネジャーたちと、友人、そしてアパートの大家だ。

 マネジャーたちは、賞味期限が近い食品を持ち帰っていいと言ってくれたし、失業保険の申請を手伝ってくれた。友人は経済的なサポートを申し出てくれた。大家は家賃の支払いを待ってくれた。

 筆者らはこれを「選別(winnowing)」と呼ぶことにする。より小規模で、より緊密な関係のネットワークに身を寄せるからだ。

 今回の研究では、危機のとき、なぜ人々の反応は拡張と選別に分かれるのか、そこには社会経済的な地位が関係しているのかを知りたかった。

 そこでまず、米国の大規模なサンプル調査である総合的社会調査(GSS)のデータを分析したところ、雇用の脅威にさらされたとき、社会経済的地位が低い人は選別(より小規模で限定的なネットワークに報告する)傾向があり、社会経済的地位が高い人は拡張(より大きくて制約のないネットワークに報告する)傾向があることがわかった。

 このパターンは実験でも確認された。社会経済的地位が高いグループも低いグループも、仕事を失うことに脅威を感じていたが、助けを求める相手のネットワークは違っていた。

 なぜ、このような違いが重要なのか。

 危機のときは、誰もがごく親しい仲間に慰めを求めるものだ。しかしブリアナのように社会経済的地位が高い人が、新しい情報や機会を持つ人たちにネットワークを拡張すると、脅威から立ち直りやすくなると、スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッター教授(社会学)は「弱いつながりの強さ」に関する研究で報告している。

 社会経済的地位が高い人はなぜ、脅威にさらされたとき、拡張する可能性が高いのか。筆者らのフォローアップ研究によると、自分の環境の主導権を握っていると感じている人(地位が高い人など)は、社会的に快適な範囲を超えて、友人や家族よりも自分を無視したり拒絶したりする可能性が高い人にも、自信を持ってリーチできる。

 最貧困層の論理も、学習経験に基づく。カリフォルニア大学バークレー校のサンドラ・スーザン・スミス教授の研究によると、貧しいアフリカ系米国人は、高い地位の知人からの助けを得るのに苦労する。なぜなら、こうした知り合いは、信頼できないかもしれない人物を推薦することで、自分の評判を危険にさらしたくないからだ。

 これは、貧しいアフリカ系米国人に対するスティグマ(負の烙印)が引き起こす問題だ。彼らにもコネクションはあるが、相手は彼らと関係があると思われたくなかったのだ。