慎重性を取り戻す

 企業会計における慎重性には、当局による規制のあり方という側面と、経営者の心構えという側面の両方がある。したがって、会計に慎重性を取り戻すためには、この両面での対策が必要だ。

 第1に、米国の証券取引委員会(SEC)や他国の同様の機関は、新しく導入される会計原則すべてに(そして、2000年頃以降に導入された既存の会計原則のすべてにも)慎重性の要素を取り入れるよう求めるべきだ。具体的に言えば、将来期待される収入(もしくは損失の回避)をバランスシートに記す場合に、客観的なエビデンスを要求すべきである。

 第2に、企業の取締役会と監査役は、無形資産の計上や、のれん償却の回避など、恣意的な要素が入り込みやすい項目について、CEOとCFOの判断を鵜呑みにすべきでない。取締役会と監査役がこうした姿勢を示せば、経営陣もこれまでより厳しい基準を採用するだろう。そうすれば、バランスシートの質が改善されることが期待できる。

 会計における慎重性の原則は、少なくとも1400年代から存在し、19世紀後半に近代資本主義が出現した頃には、すでにしっかり確立され、広く認められた会計の原則になっていた。

 しかし、私たちは近年、この歴史を捨ててしまった。その結果が、2度にわたる大規模な金融危機と巨額の救済措置だった。私たちはその痛い教訓から学び、この原則を取り戻すべきだ。


HBR.org原文:Businesses Must Reclaim Prudent Accounting Principles, June 12, 2020.


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