慎重性が効率性とレジリエンスのバランスを生む

 レジリエンスとは、打撃に耐え、そこから回復する能力のことだ。失敗を吸収して前に進み続けるための「ゆとり」と考えてもよいだろう。損失を生み出している部門を閉鎖せず、それを維持し続けようとする企業は、レジリエンスを持っていないと見なせる。

 また、事業を成長させるために借り入れを十分に活用できていない企業も、レジリエンスを持っていないと言える。いくつか失敗しても持ちこたえられるように、事業を多角化できていない可能性が高いからだ。

 効率性が高いとは、一言で言えば、一定の投入量により生み出せる生産量が高く、無駄が少ない状態を言う。効率性の高い企業は、同業他社と比べて、保有資産が少なく、借り入れが多い。このような要素は、一見するとレジリエンスを弱めるように感じられる。苦しい状況に置かれたときに活用できる蓄えが乏しいように見えるかもしれない。

 しかし、資産が少ない企業は、急いでいるときに不要な荷物をあまり持たずに出かけられる人に似ている。資産をたくさん抱え込みすぎないと言っても、本当に必要な荷物まで捨てるわけではない。問題は、過剰なダイエットに走る人たちと同じように、資産を減らしすぎる企業が少なくないことなのだが。

 また、同業他社より借り入れが多いということは、より少ない資本でより多くの成果を挙げられることを意味する。この点は、危機に見舞われているときのように資本が不足している際には、大きな強みになる。

 重要なのは、効率的な規模で活動するのに必要な範囲で借り入れを行うことだ。配当やボーナスを支払うために借金をしてはならない。それは、前回の金融危機のときに一部の金融機関が犯した過ちだ。

 慎重な会計には、効率性を高める要素と、レジリエンスを高める要素のバランスを取る効果がある。そのような会計の原則を採用すると、企業は資産を抱え込まず、(会社が良好な状態にあるときでも)損失が明らかになったプロジェクトを素早く清算するよう促される。

 その結果、社内の、そして経済の中の無駄なものに貴重な資金が投じられづらくなる。そして、経営が厳しくなったとき、その会社は望ましくないコストを抱え込みにくい。この点は、納税者も含めて、多くの人にとって安心材料と言えるだろう。

 一方、慎重な会計を実践している企業が負債を増やす場合は、財務の数字が悪くなることを承知の上で借金をする。より保守的な姿勢で借り入れを行うことになるので、その債務の安全性は比較的高い。そのため会社と債務者は、危機の直撃を受けたときに壊滅的なダメージを被る危険が小さい。

 慎重な会計の利点はこれだけではない。そのような会計を実践する企業は、状態がよいときに、損失に素早く気づき、配当やボーナスを機動的に減らせる。その結果、資金を持っておくことができ、危機を乗り切るためのゆとりが大きくなる。