●コミュニケーション:過剰なコミュニケーションが奨励されているが、過ぎたるは及ばざるがごとし

 リーダーが透明性を求める場合、その多くはよかれと思って要求している。現在の危機に対する不安を和らげるために、多くのリーダーシップ・チームが、新型コロナウイルスに関する特設サイト、近況報告、メール、新たな方針の発表、バーチャル集会などを通じて、可能な限り多くの情報を従業員に提供している。

 ただし、神経科学的なエビデンスによると透明性、つまり情報への完全なアクセスが、必ずしも安心感を生むわけではない。現在、平均的な米国人の1日の仕事時間は、パンデミック前より40%長くなっている。疲弊した脳は、さらに考えなければならない情報を求めていないし、必要ともしていない。

 先日、筆者のクライアントと戦略立案の打ち合わせをした際に、あるシニアリーダーが、新型コロナウイルスに関する大量のコミュニケーションに疲れてしまい、メールのフィルター機能を使って、件名に「新型コロナ(Covid)」を含むメールを自動削除していると言っていた。

 情報の霧の中で従業員を導くことが目的なら、解決策は、大量の情報共有ではなく根本的な明瞭さにある。これは、いわゆる透明性とは異なる。透明性とは、どの情報を扱って、どの情報を扱わないかを明確にするということだ。それに対し根本的な明瞭さは、何を優先し、何を優先しないかを詳細に説明することである。

 危機は本質的に、私たちの対応能力を超えるものだ。これからの職場復帰にあたって、リソースが与えるよりもはるかに多くの問題に注意を払おうとする、誤った衝動が生じるだろう。その衝動はコントロールすることが難しいため、リーダーシップは、他のすべてを排除して戦略的な優先事項に焦点を当てるという、コミュニケーションのヒエラルキー化の力を借りようとする。

 万能なコミュニケーション戦略は存在しないため、コミュニケーションのヒエラルキーが擁する問題は場合によって異なる。ただし、有益な経験則から言えば、最優先事項を5つ定義するとよい。

 ここで重要なのは、不安にさらされている脳が、表面的には多くのことに気を配っていても、実質的には何も解決していないということだ。つまり、不安な脳は生産性ではなく、反応性に長けている。

 したがってリーダーは、優先事項に集中した計画を実行すれば、大いに戸惑いを招くことを知っておかなければならない。そこが肝要だ。

 ここで生じる戸惑いの強さは、私たちの真の価値観を明らかにして、行動に意味のある変化をもたらす。

 変化が痛みを伴うことは誰もが理解しているが、その理由を完全に理解している人は、ほとんどいない。変化の痛みは、エネルギーが集中する変化のモチベーションだけでなく、変化に際して不本意ながら自発的に手放さなければならない、価値のあることやよいアイデアからも生まれる。