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新型コロナウイルスによるパニックが徐々に収まりつつある中で、職場復帰が始まっている。リーダーたちは未知の環境への対応に不安を抱えるがゆえに、チームの管理を強化したり、自分の精神的な強さを誇示したりすることが重要だと思うかもしれない。だが実際には、直感に反する戦略が効果を発揮することが多い。本稿では、パフォーマンスの管理、コミュニケーション、リーダーシップという3つの視点から、リーダーがとるべき逆説的な戦略を紹介する。


 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の目もくらみそうな混乱が減速し始めて、リーダーたちは回復を目指す長い道のりに備えようとしている。その最初の重要なステップは、仕事と健康の将来を案じている大勢の従業員の不安に、効果的に対処することだろう。

 現在経験している痛みを考えると、リーダーを待ち受ける難題に対し、レジリエンス、信頼性、つながりを持って取り組むための「ヒント」はそれなりにある。いずれも感情が不安定な時期に行動を安定させるうえで極めて有用だが、それだけでは足りそうにない。

 この機会を利用して、心配で気もそぞろな従業員を以前と同じ仕事に復帰させるだけでなく、それ以上のことをやりたいなら、不確実性に対する脳の反応の科学的な研究から学べることがたくさんある。

 意外なことに最も効果的なのは、直感に反した戦略である場合が多い。科学的なエビデンスによると、不安に打ち勝つためには、本能的にやりたいことに注意を払いつつ、それとは反対のことを積極的に考えるといい。

 たとえば、夜間に壊滅的な襲撃を受けたあとに、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ退役軍人について考えてみよう。その一般的な対処法は、長年の間、外傷について明示的な言及はもちろん、少しでも関連することは避けるべきとされてきた。

 辛い出来事との間接的な関連すらも避けることは、直感的には理にかなっているが、PTSDの最も効果的な治療法は正反対だ。つまり、トラウマについて詳細な議論を繰り返すことと、従来は避けていた関連する事柄にしっかりと関与することが必要になる。

 ここで重要なのは、臨床診断ではなく、不確実性に対して人間の脳が確実に示す反応だ。不安を抱えていると、一般的な不安でも臨床的な不安でも、最善の利益にならない決断を反射的に下すことが少なくない。

 筆者はチェンジ・マネジメントに取り組む企業と仕事をする中で、新しいリーダーが日々の「危機」の魅力に気を取られやすい姿をよく目にする。逆説的に言えば、こうした有無を言わさぬ行動は、リーダーらしからぬと思われる行動よりも成功する確率は低い。すなわち、動かずに、耳を傾け、じっと待つことは、リーダーとして間違っていると思われているが、実はそうではない。

 多くのリーダーは、職場復帰の問題にどのように対応するか、幅広く考えている最中だ。9.11や2008年の世界的な金融不安のような危機とは異なり、新型コロナウイルスの試練は、目に見えない狡猾な敵との戦いであり、先が読めない、一進一退を繰り返す病原体との戦いだ。さらに、このウイルスは潜伏期間が驚くほど長いため、どれだけ厳格に職場の予防措置を取っても、効果がないかもしれない。

 これらのことに、誰もが不安を感じている。だからこそ、不安を感じている脳について、科学的にかなりのことが解明されているという事実は、極めて有益だろう。たとえば、不安になると間違ったことに気を取られやすいことがわかっているから、それに備えることにより、本能的な反応を克服しようとできるだろう。

 以下に挙げる3つの逆説的な戦略は、神経科学と心理学に根ざしたものである。パフォーマンスの管理、コミュニケーション、効果的なリーダーシップについて、リーダーがいま、まさに抱えている不安に対処する手助けとなる。