HBR Staff/Delmaine Donson/Spiderstock/Getty Images

在宅勤務が常態化する中、ほぼすべての交渉がバーチャルで行われてきた。バーチャルな環境では対面ほど情報がリッチではないため、相手と信頼関係を築いたり、過不足ないコミュニケーションを取ったりすることは難しい。ただし、事前の準備、また交渉の進め方を工夫することで、成功率を上げることはできる。


 この数ヵ月間、交渉ごとはほぼすべてバーチャルで行われてきたが、コロナ禍以前からデジタルツールを介した交渉は増えていた。ビデオ会議や低コストの電話会議やメールでも、効率的にチーム内の事前準備と実際の交渉が行えるようになっている。

 それでは、バーチャルでの交渉に関して、これまでどのような研究結果が出ているのだろうか。対面交渉と比較して、遜色のない価値を生み出しているのだろうか。

 それは、どちらとも言いがたい。

 先に残念な話からすれば、バーチャルな交渉では、客観的な成果は乏しくなり、交渉相手に温かみや信頼感を感じにくい傾向がある。さらに、2002年に実施されたメタ分析の結果は、交渉を対面で行わない場合、集団による意思決定のメリットと満足度がともに低く、長期化しやすいことを示唆している。

 メール――特に内向的な人が対立状態で志向する――ではどうかというと、協調性が低下する傾向がある。メールの場合、文句や否定的な意見を言いやすいからだろう。

 また、誤解が生じるリスクが高い。ジャスティン・クルーガーとニック・エプリーらの調査では、人は実際よりも、自分のメッセージが相手に正しく理解されたと思い込む傾向があることがわかった。さらに2019年の調査は(案の定だが)、メールでは相手の感情を読み取るのが難しいことを示唆している。

 興味深いことに、43件の研究結果を対象としたあるメタ分析の結果は、女性の場合、バーチャル環境では対面よりも協調性が低くなるが、男性の戦術はそれほど変わらないことを示唆している。女性は、対面していないときには、対面しているときほど礼儀正しく、親和的に振舞う必要を感じないのかもしれない。

 前向きなほうの話をすると、研究結果は、バーチャル環境という障壁が加わったことにより、双方の共同利益を見出しにくくなったとしても、交渉の成功率を高める方法も示唆している。