仕事全体ではなくタスクに焦点を当てる

 知識労働は一様ではない。そして非常に複雑なため、知識労働は一つの「ユニット(まとまり)」と言い表すことができる。

 たとえば大学は、学生に学位を与えるために教育を提供する。したがってここでの「ユニット」は、学生が卒業時に取得する「学位」と考えることができる。しかし、このユニットを成立させるためには、たくさんの非常に異なるタスクを伴う。

 では、この文脈における「ギグ化(gigification)」とは何を意味するのだろうか。

 大学は、採点者、ティーチング・アシスタント、事前録画によるオンライン講義などにギグワーカーを雇うことを検討できるはずである。だが、節目となる重要な授業(対面であれバーチャルであれ)はたいてい、特定時期にリアルタイムで行う必要があり、これをギグワーカーに委託することは考えにくい。

 どんな学位でも両タイプの授業が必ず必要となるため、大学の授業は常に両方のハイブリッドとなる。少なくともコース単位ではそうであり、場合によっては1つの授業の中でも両方が混在する。

 ここからわかるのは、すべての知識労働は一連の異なるタスク群に分解できるということだ。ゆえに知識労働者によるギグエコノミーの未来を読み解くには、仕事全体ではなく、タスクのレベルで分析する必要がある。

 以下に示すシンプルな工程図は、どんな種類のタスクがギグ化に適しているのかを理解するうえで非常に役立つ。ここでは、製品やサービスの供給に必要となる知識集約的なタスクそれぞれについて、3つの基本的な問いを投げかける。

(1)そのタスクは体系化できるか

 最初に、要求を規定しやすく客観的に測定できる体系的なタスクと、それができない非体系的なタスクとに分ける。体系化が可能なタスクは、確実にギグワーカーに委託できる。この種のタスクに伴う組織プロセスは、概して再構築しやすい。

 体系化できないタスクのギグ化は簡単にはいかない。その中でどれにギグエコノミーを適用できるかを知るには、2つ目の問いに答える必要がある。

(2)価値創造と価値消費の間にタイムラグがあるか

 タスクによっては、価値の創造と消費は同時でなければならない。医師による患者の診察などが例だ。

 この種のタスクが顧客対応型のものである場合、ギグ化には大きなリスクが伴う。品質のチェックと修正ができないためである。その顧客が自社内の人である場合は、もう一段複雑になる。内部顧客に対応する際には通常、組織文化に馴染んでいなくてはならないからである。

 とはいえ、多くのタスクでは価値の創造と消費にタイムラグがあるか、タイムラグを設けることができる。たとえば、企業監査の実施(価値創造)と、その結果を取締役会に伝えること(価値消費)は、異なるタイミングで行われるかもしれない。実際、2つの事象間にタイムラグがあれば、品質チェックという工程を挟む機会ができるため都合がよい。

 加えて、タイムラグを設けることでワークフローをよりモジュール型にできるため、協働の必要性が減り、ひいてはタスク遂行者が組織の力学と政治を理解する必要性も減る。

 ただし、ギグ化のためにワークフローを調整する際には、当然ながらタスクの再構成という大きな課題が生じる。そこで、3つ目の問いにつながる。

(3)そのタスクはリモートで遂行できるか

 パンデミックの発生以前、リモートワークに最も馴染んでいたのはソフトウェア企業であった。たとえば、GitLab(ギットラボ)では、1200人以上の従業員がリモートで働いている。

 同社はリモートと職場での慣行の違いを示した「リモート・マニフェスト」なるものを作成した。この文書によれば、リモートワークで優先されるのは「決められた就労時間よりも、柔軟な就労時間」「ナレッジは口頭で説明するよりも、書いて記録する」「同時よりも非同期のコミュニケーション」である。留意点として、こうした慣行はどれも、価値の創造と消費にタイムラグがなければ導入は難しい。

 パンデミック以前には、ソフトウェア以外の業界でギットラボのような慣行を持つ企業は、ごく稀であった。つまり、非ソフトウェア企業にとって、そうしたアプローチの導入には一定のリスクがあったということだ。

 しかしコロナ禍によって、これまでリモートワークに無関心だった業界の企業も、異なる就労形態の併用を長らく阻んできた業務プロセスの抜本的な見直しと、技術面の支援システムの強化を余技なくされている。結果的に、さまざまな自然実験が――その多くはソフトウェア企業の経験よりも、自社のニーズに即した形で――行われており、ギグエコノミー型への移行を考えている企業にとってはよい出発点となるだろう。

 コロナ禍が知識労働のギグ化における転換点となる可能性は、十分にある。多くの企業は、ギグエコノミーというモデルがもたらすであろう直接・間接のコスト削減の可能性に惹きつけられるはずだ。

 とはいえ知識労働の複雑性を踏まえれば、無理にやりすぎて失敗したり、投資が無駄になったりするリスクも常にある。筆者らが提案したタスクに基づく単純な分類法は、ギグワーカーに委託すべきタスクをマネジャーが賢く選ぶために役立つはずだ。


HBR.org原文:Will the Pandemic Push Knowledge Work into the Gig Economy? June 01, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
いまこそ、「理想の労働者」を再定義すべきである
オープン・イノベーションをいまこそ推進すべきである
いまこそ、キャリアを中断した人の職場復帰制度を整備せよ