女性の営業部員が有利な環境に

 本稿執筆陣が設立したコンサルティング会社、ZSアソシエイツの調査によると、営業に成功する女性営業部員は、男性とは異なる側面で優れた能力を持っている。

 この調査では、金融サービス、工業向けサービス、ヘルスケアなど、いくつかの業界の500人を超す営業部員の営業成績を調べた。そのうえで、それぞれの営業部員の営業成績と7種類の能力との関係を分析した。私たちが開発した枠組みによれば、高い成果を挙げる営業部員と月並みな成果しか挙げられない営業部員の違いを生み出すのは、この7種類の能力であることがわかっている。

 高い成果を挙げる営業部員が傑出している7つの能力

・分析:原因と結果の関係を理解し、物事の全体像を見ることができる。

・つながり:顧客やチームメンバーなどの人的ネットワークを築ける。

・協働:ほかの人たちと協力して行動できる。

・解決策の形成:顧客のニーズを理解し、それに応じて提案を修正できる。

・影響:相手に与える影響を最大化するように、メッセージやスタイルを形づくれる。

・推進:計画に従って秩序だった行動を取り、予定通りの結果を生み出せる。

・改善:常によりよいやり方を探し、新しいことを試すつもりでいられる。

 高い成果を挙げている営業部員は、女性も男性も7つの能力すべてを、ある程度発揮していた。しかし、高い成果を挙げている女性営業部員は、つながりと解決策の形成と協働する力に秀でている場合が多く、高い成果を挙げている男性営業部員は、改善と推進の能力を強みにしている場合が多かった。分析と影響力の能力に関しては、ジェンダーによる違いは見られなかった。

 今日の顧客は、デジタルテクノロジーに精通し、購買に関する判断を自力で下すことができ、情報も昔よりたくさん持つようになっている。そのような変化を受けて、顧客が営業部員に対して抱く期待の中身も変わり始めた。人間の営業部員に対しては、デジタルツールにはない付加価値をもたらすことを期待するようになったのだ。

 このような時代に営業部員に強く求められるのは、顧客と協働することと、顧客の事情に合わせて解決策を形づくることだ。要するに、顧客のニーズに向き合うことの重要性が高まる。こうした能力は、顧客を説得する能力、つまり影響や推進の能力よりも大きな意味を持つようになる。そのような環境では、女性の強みがものを言う。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、多くの業種でビジネスがかなり停止した。これを機に、ビデオ会議システムなどのデジタルテクノロジーを用いた、リモート営業への移行が進むだろう。その結果、コロナ禍が落ち着いて、商業活動が再開されたときには、営業のあり方が恒久的に変わりそうだ。

 そうなったとき、女性営業部員の強みがいっそう際立ってくる。女性が秀でている能力は、新しい営業環境と顧客ニーズに適合しているからだ。

 たとえば、投資商品の営業について考えてみよう。この分野は、これまでずっと男性優位の世界だった。しかし、テクノロジーの進化により、顧客である投資家たちは、さまざまな面で昔ほど投資アドバイザーに依存しなくなっている。

 コンピュータのアルゴリズムを用いた「ロボアドバイザー」が投資を分析し、適切なポートフォリオを提案するようになったし、投資家はオンラインを活用して自分で金融取引も行える時代になった。

 それでも、そうした投資家たちも、長期の資産計画については専門家の助言を欲しがる可能性が高い。長期の問題に関する意思決定は、複雑性が高かったり、人間の感情が絡んできたりするからだ。

 投資アドバイザーが顧客に対して価値を生み出すためは、相手の話に耳を傾け、共感を示し、物の見方を提供して、家族内の合意形成を助けることが必要になってきた。このような変化のなかで、投資アドバイザーが成功する条件として、つながりと解決策の形成と協働の能力、つまり女性が優れている能力が重要性を増しつつある。

 成長著しいテクノロジー業界の営業でも、女性が秀でているスキルの価値が高まっている。この業界も、これまでは男性優位の性格が強い世界だった。

 法人向けテクノロジー商品の売上げでは、1回限りの販売による売上げよりも、サブスクリプション(SaaSなど)とサービスの利用(クラウドサービスなど)による売上げの比重が大きくなりつつある。価値の大半は、顧客が最初に商品を購入する段階ではなく、顧客が商品を使用し、購入数を増やしていく過程で生まれる。

 このような潮流に乗って、「カスタマー・サクセス・マネジャー(CSM)」と呼ばれる営業部員が増えている。顧客が継続して価値を手にするのを助けることにより、顧客ロイヤルティを高めて、顧客をつなぎとめるタイプの営業部員のことだ。

 CSMが成功するために必要なのは、つながりと協働と解決策の形成の能力である。くどいようだが、これらは女性が強みを持っている資質だ。

 キャリア関連のさまざまなデータによれば、テクノロジー分野の営業職全体の中で女性が占める割合は4分の1程度にすぎないが、CSMの少なくとも50%、多ければ70%が女性だという。2020年4月の時点で、オラクルやセールスフォース・ドットコムなど、いくつかの有力テクノロジー企業では、グローバルなカスタマーサクセス担当チームを女性が率いている。

 また、コロナ禍により、出張が減り、ビデオ会議などのデジタルコミュニケーションの活用が加速している。出張が少なくなれば、男女を問わず、キャリアと家庭のバランスを取りたい人たちにとっては仕事がしやすくなるだろう。

 加えて、企業で購買決定の役割を担う女性が増えていることの影響も見過ごせない。そのように顧客基盤が変容すれば、女性営業部員のほうが顧客との間に強固な関係を築きやすくなる。