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交渉で有利な条件を引き出そうと努力しても、相手から一方的に打ち切られるケースは珍しくない。そこで諦めてしまう人も多いが、なかには最後通牒を突きつけられても粘り続け、譲歩を引き出せる人もいる。その違いはどこにあるのか。筆者らの研究により、「選択マインドセット」を持てるかどうかがカギを握ることがわかった。


 交渉の最中に、こんなふうに言われたことがあるかもしれない。

「私にできるのはここまでです。あとは、あなたが応じるかどうかだ」

「これ以上の譲歩はできません。申し訳ありません」

 交渉では多くの人が、相手から譲歩を引き出すために、こうしたソフトな最後通牒を使う。実際、それで成功する場合も少なくない。

 では、あなたが最後通牒を受ける側なら、何ができるだろうか。どのように粘って、自分に有利な条件を引き出せるだろうか。

 筆者らの研究から、最後通告をうまく操る方法がわかった。驚くほど簡単な方法だ。そのカギは「選択マインドセット(choice mindset)」、すなわち自分と交渉相手が持っているすべての選択肢について考えることだ。

 選択マインドセットは、どのような状況でも選択肢があるという考え方だ。

 たとえば、マネジャーが、「予算削減のために、この従業員を解雇しなければならなかった。選択の余地はなかった」と報告したとしよう。選択マインドセットの人は、ほかに選択肢がなかったという説明を信じようとせず、マネジャーは解雇を回避するために何かできたはずだと考える。

 選択マインドセットで交渉に臨む人も同じように、相手にこれで限界だと言われても、選択肢がまだあるはずだと考えるのではないか。もしそうであれば、最後通告を突きつけられても、彼らはそれを無視したり、信憑性が低いと捉えたりして、交渉の余地はまだあると信じ、交渉を続けようとする可能性が高い。

 筆者たちは『オーガニゼーショナル・ビヘイビア・アンド・ヒューマン・ディシジョン・プロセシズ』誌に掲載された論文で、この推論を6つの研究から検証した。そして、交渉人に自分と相手のどちらも、あるいは自分か相手だけが持つすべての選択肢について考えるように促すと、最後通告を受けたあとも交渉を続けようとすることがわかった。

 この傾向は、いわゆる「配分型交渉」にも「統合型交渉」にも当てはまった。前者は、一方の当事者の利益がもう一方の当事者の損失となる。後者は、競合する優先順位の中で取引を行い、双方にとってより大きな利益を生み出すときもある。