(1)測定指標の選択は、しかるべき関係者をすべて関与させることで慎重を期す

 物事に数字を当てはめるのは簡単だ。一つのソフトウェアがはじき出した点数に基づいて、早急に判定を下すこともそうである。こうしたやり方は、不必要な監視と不適切な判断の両方につながる。生産性や効率や収益とは実質的に関係がない情報に反応してしまうことは、よくある。

 従業員のモニタリングにこだわるならば、追跡対象が適切で不可欠なものであるよう万全を期す必要がある。単にメールの作成量や閲覧量をモニターしても、生産性の指標としては信頼できない。

 適切な測定指標を設けるには、それらを決める過程で、しかるべき関係者をすべて関与させるとよい。採用マネジャー、監督者、実際にモニターされる従業員までを含めてだ。

 関与を求める際には、熟練社員と新人社員の両方に接触し、「報復」への恐れがない環境で意見を出してもらうことが特に重要だ。たとえば、話し合いには彼らと監督者が同席してもよいが、解雇や昇進の権限を持つ直属の上司ではないほうが望ましい。

(2)何をモニターするのか、およびその理由を従業員に開示する

 他者尊重の本質は、時間をかけてオープンで誠実なコミュニケーションを取ることだ。

 何を、なぜモニターするのかを従業員に伝え、フィードバックの機会を与えよう。モニタリングの結果を従業員と共有しよう。収集されたデータによって当人のキャリアに影響が及ぶような決定については、「上告」を可能にする制度を設けることがきわめて重要だ。

 透明性によって、許容率が高まる。ガートナーの調査では、雇用主によるメールのモニタリングを問題ないとしている従業員は30%のみであった。しかし同じ調査で、雇用主がモニターを行う旨を告げて理由も説明した場合、従業員の50%以上が問題ないと回答している。

(3)アメとムチの両方を与える

 モニタリングや監視のためのソフトウェアは、コンプライアンスと服従を至上とする監督者を暗に連想させる。たとえば抑圧的な政府は、監視を罰金や投獄のための脅迫へとつなげる。

 しかし雇用主は、モニタリングを抑圧の手段になどする必要はない。従業員の生産性向上をどう支援できるか、または頑張りにどう報いればよいかを見つける手段と考えるほうがよい。

 すなわち、非効率を減らすためのムチとしてだけでなく、モチベーションを高め、しかるべき成果数値を伸ばすためにどんなアメを用いればよいかを考えるということだ。

(4)卓越した社員でも、常に卓越した仕事ができるとは限らない、という事実を受け入れる(現在の状況では特に)

 いまは特殊な時期である。従業員の良し悪しや勤勉さを、この状況下での仕事ぶりで判断するのは、倫理的にも事実的にも間違っている。

 非常に勤勉かつ有能な社員でも、たとえば子どもの学校や育児をめぐる選択肢が不足しているなどの理由で、精神的にひどく疲弊しているかもしれない。こうした人たちこそ、会社はつなぎとめておくべきだ。長い目で見れば、膨大な価値をもたらしてくれるからである。

 成果数値が期待を下回っている場合、上司には時間を取って部下と話をさせよう。繰り返すが、その対話では部下の置かれた状況への理解を反映し、脅迫ではなく創造的な解決に専念すべきだ。

(5)非白人やその他の社会的弱者に不均衡な影響が及ばないよう、自社のシステムを監視する

 どの企業でもダイバーシティ・アンド・インクルージョンの取り組みで核となるのは、伝統的に社会的不利を被っている人々に対する、あらゆる差別を排除するというコミットメントである。

 他ならぬ社会的不利という理由で、彼ら彼女らは組織で下級の役職に就いている場合が多く、下級職は最も監視対象となりやすい。つまり、インクルージョン施策によって保護すべきまさにその人たちを、不相応に強く監視することになりかねず、倫理的・法的にも会社の評判にとっても大きなリスクとなるのだ。

 従業員へのモニタリングで重要なのは、最下級職への監視を、その上司への監視よりも格段に厳しいものにはしない、または少なくとも、前者に特別な負担をかけるほどのレベルにはしないことだ。たとえば、下級職に対する監視レベル(例:感情分析、キーボードの入力記録など)が、彼らより少しだけ上級の社員には適用されていない、といった場合は特に問題である。

「当社はこの方法でほとんどの社員をモニターしますが、最下級職はもっと格段に強い監視を受けることになります」という方針よりも、「当社はこの方法で全社員をモニターします」とするほうが、倫理面へのイエローカードは少ない。要するに、規則を平等に適用すれば、差別だという非難の勢いを正当な方法で弱めることになるのだ。

(6)時と場面によって可能であれば、モニタリングを減らす

 モニターをしたいという衝動は――こんな時期には特に――当然ともいえる。とはいえ、人々が職場に戻ってきたら(在宅勤務を続ける人もいるにせよ)、業務が順調に進んでいる部分ではモニタリングの取りやめを模索すべきだ。

 そうすることで、従業員に対する信頼の表明となる。さらに、状況が一時期よりも落ち着いた後、会社が必要以上の管理権限を持つ傾向を是正することにもなる。

 雇用主にとって最も貴重な資産は結局のところ、従業員だ。他者にはない組織的ナレッジとスキルを彼らは有している。

 時間と金を彼らに投じてきた分、他者に置き替えるのは非常に高くつく。従業員に敬意を持って接することは、当然という以上に、自社の人材定着施策として不可欠なのだ。

 あなたの会社がもし、現在のような状況下で監視ソフトの導入を選ぶなら、自分たちは警察ではないことを肝に銘じる必要がある。警棒を振り上げるのではなく、手を差し出すことで従業員をモニターしなければならない。


HBR.org原文:How to Monitor Your Employees - While Respecting Their Privacy, May 28, 2020.


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