従業員モニタリング用の――もしくはプライバシー擁護派に言わせると「会社による監視」のための――デジタルツールは豊富だ。ステルスでの(秘密裡に行う)モニタリング、ライブ動画配信、キーボード・トラッキング、光学式文字認識(OCR)、位置追跡などを可能にするサービスがいくつもある。

 その一社であるハブスタッフが提供するランダム・スクリーンキャプチャは、仕事中の画面のスクリーンショットを「10分ごとに1回、2回または3回」マネジャーの指定通りに記録するよう設定でき、社員ごとにカスタマイズできる。

 テラマインドという別の会社は、キーボードの操作をすべて保存し、「すべての情報を、ユーザーの行動解析の基盤を形成するために使える包括的なログ」として記録する。

 しかし、さまざまな選択肢が容易に選べるとはいえ、モニタリングを推し進める企業には、現実的なリスクも付いてくる。監視は、雇用主と従業員間の信頼を蝕む恐れがあるのだ。

 アクセンチュアの調査によると、従業員の52%は、データの取り扱いの不備によって信頼が損なわれると考えている。そして調査対象の経営幹部のうち、データが常に責任を持って取り扱われることに「自信がある」と回答した人は、30%にとどまった。

 いまや新たなレベルの監視にさらされている従業員は、常にモニターされることで「信じがたいほどのストレスが溜まっている」と同時に、監視に対して物申すのが怖いとも述べている。これは不満だけでなく燃え尽きの原因にもなり、皮肉なことに、どちらも生産性の低下を招く。

 なお悪いことに、モニタリングは強い反発を生む場合もある。2019年10月にグーグルの社員らは、社内での反対意見を抑え込むためにスパイツールが作成されたという主張を公表した。

 生産性維持の一環としてモニタリングを導入するのは魅力的に思えるかもしれないが、これは昨今の企業界のトレンドともきわめて折り合いが悪い。多くの企業は従業員体験の向上に取り組んでおり、特にダイバーシティ・アンド・インクルージョンには注力している。

 倫理面でのもっともな理由だけでなく、収益面でも注意すべき理由がある。2019年版のデロイト・グローバル・ミレニアル・サーベイによると、ミレニアル世代の55%は、人よりも利益を優先する会社ならば辞めようと考えている

 新人の採用と研修にかかる高いコストを考えれば、人材の定着はすべての企業にとって優先すべき課題だ。ミレニアル世代のそうした価値観を反映しない企業は、人材の維持に苦労し高い代償を払うことになる。

 社員を失いかねないリスクに加え、ツールのエラーや誤用の可能性も踏まえれば、モニタリングは多くの企業にとって取り組むに値しない公算が高いのだ。

 それでもなお、代償を払うだけの価値はあると見なす企業もあるだろう。経済崩壊に対する当然の不安から、雇用主がモニタリングを通じて従業員の生産性と効率を確保したくなるのは無理もない。

 むしろ企業によっては、従業員の健康と国全体の健全性を保つためといった、倫理的に立派な意図さえあるかもしれない。また、追加の支援が必要な従業員を見つけるという目的でツールが導入されるのであれば、なおのことモニタリングは妥当となる(この点についてはさらに後述する)。

 とはいえ、企業は(どんな理由であれ)従業員をモニターすべきという結論に至ったならば、彼らを最大限に尊重する形で行うことが大事である。その危ない橋を渡るにあたり、以下の6つを推奨したい。