組織レベルでは、最もダメージを受けている従業員に特別なサポートを提供する

 従業員ごとに経験もインパクトも異なることを認めながら、会社としての仲間意識を育てよう。インクルーシブで安心できる企業文化をつくる、万能の方法はない。会社が絶好調のときでさえ、ダイバーシティを図る努力が散漫だと、非白人の貢献は見落とされがちで、不利な立場に置かれることさえある。

 しかし、新型コロナウイルス感染症が非白人により大きな被害をもたらしていることはデータから明白だ。そのためリーダーが特定のコミュニティが直面する問題を指摘するとき、それが具体的であることが、これまでになく重要になっている。

 ●「カラーブラインド」なメッセージで非白人従業員が被る重圧を過少化しない

「みんなで頑張ろう」「これは無差別的なウイルスだ」といった表現は結束を感じさせるが、カラーブラインド(肌の色は関係ないという考え方)なメッセージは、非白人従業員の共感を得られないし、むしろパフォーマンスを妨げることがわかっている。

 本稿執筆陣の一人であるエリン L. トーマスが勤務するフリーランス人材紹介会社のアップワークは、毎週発信している新型コロナウイルス感染症の関連情報メールで、全従業員を元気づける一方で、非白人従業員が特別な困難を経験していることにも言及している。

「ベイエリア(サンフランシスコ湾岸地域)とイリノイ州の複数の郡では、4月22日水曜日の正午から、13歳以上の住民が公共の場、あるいはプライベートな場所で家族以外の人と交流するときは、マスク着用を義務づける命令が出されました。現在、個人防護具(PPE)は調達が難しくなっているため、当社のイントラネットに追加リソースを用意しました。
 黒人など非白人のチームメンバーの皆さん、あなたたちがPPEを着用すること自体がリスクになるという事実には、私たちも不快感を抱いています。どうかマスクを着用する際は、そのことをよく理解しておいてください」

 ●非白人従業員の経験や気持ち、ニーズを明らかにする機会を設ける

 アップワークはこの4月、本稿執筆陣の一人であるミシェル・キムがCEOを務めるアウェイクンと提携して、新型コロナウイルス感染症により増えているアジア系への人種差別をテーマとするフォーラムを設置した。アップワークのアジア系従業員の経験談を共有してもらおうというのだ。

 この真摯な取り組みは、アジア系従業員とその家族が経験していることに緊急の対応が必要だという意識を生み出し、会社全体がアジア系従業員をサポートする空気をつくり出した。従業員はこのフォーラムでバイアスの科学と歴史も学び、自分自身が持つバイアスを退治するとともに、排外主義的な言動を見かけたときは注意する戦術を身につけることができた。

 ●メンタルヘルス関連の福利厚生とリソースを分析・拡大し、トラウマや悲しみを経験している従業員をサポートする

 たとえば、現行の忌引きルールの見直しや、親族を失った従業員をサポートするツールを人事部とマネジャーに提供したり、従業員支援プログラム(EAP)と社内セラピストの文化的な知識を調べたりしてみよう。スターバックスは、従業員とその家族に年間20回まで無料セラピーまたはコーチングを提供して、メンタルヘルス関連の福利厚生を充実化させている。

 ●人事上の決定(レイオフ、自宅待機、賃下げ)がダイバーシティとエクイティに与える影響を調べる

 テルアビブ大学のアレクサンドラ・カレフ准教授(社会学・人類学)の研究によると、黒人などの非白人従業員は、末端の職種で大きな割合を占めるため、レイオフ(一時解雇)される可能性が高い。こうした状況が、あなたの会社にも存在するか(またはその危険があるか)を評価する方法として、カレフはレイオフの対象者リストの見直しや、職種ではなく働きぶりに基づき評価すること、そして職種をまたいだ研修やスキルアップを推奨する。

 ●レイオフされた人を中心に、緊急かつ平等なプロセスで採用を行う

 大量のレイオフと自宅待機が生じる中、複数の企業が対象者リストを共有して、次の採用プロセスで活用している。いますぐに採用できるなら、通常のプロセスを迅速化して、これまで以上に効率的な採用を支援しよう。非白人が大量に含まれる人材プールを活用するうえで、その採用プロセスが平等に設計されるよう確保しよう。