●魅力的な方法でアイデアを提示する

 優秀なマネジャーは、何を言うかだけでなく、どのように言うかが重要だと知っている。忙しい親は、子どもが受け入れやすいような言い方を工夫して、堂々巡りを最小限に抑えることができる。

 ・先手を打つ

 会話の大半は、提案と対案で構成される。そこを利用して、相手の利害に対するあなたの利害と洞察を提示する。交渉の初期段階で自分から提案して、予想される展開と対案の方向性を決めることにより、その後の流れを決めやすくなる。

「門限は夜10時と提案すれば、息子は11時と要求するから、10時30分で落ち着くことになります。息子から言い出せば12時と主張して、結局11時になるでしょう」

 ・選択肢を用意する

 提案は1つだけでなく、選択肢を2、3個挙げて優先順位を示し、子どもが受け入れやすくする。選択は、プロセスと結果の両方を自分がコントロールしているという感覚を与える。ある親は、食事をテイクアウトする際に、このテクニックを発揮した。

「最初からすべての選択肢を並べるのではなく、注文する店は私が決めて、子どもがそれぞれ好きなメニューを選べるようにしました。この小さな変化のおかげで、我が家の緊張状態を解消できました」

 ・比較対象を明確にする

 ある提案を検討する際は、単独ではなく、ほかの案と比較しながら考える。たとえば、セール中の商品は、元の値札の金額を見ればお得感が大きくなる。「より悪いかもしれない」選択肢と比較すると、提案がより好ましく見えるからだ。

「10代の娘に、あなたの振る舞いはかなり深刻な罰を受けてもおかしくないけれど、大目に見てあげましょうと言いました」

 ・公平さについて考える

 子どもはよく「フェアじゃない!」と言う。彼らが思う「フェア」とは、すべてが完全に平等だという前提だが、それは単純かつ限定的になりがちだ。

 1枚のクッキーを割ってきょうだいで分けることは、基本的に好ましい習慣だが、4歳の子どもに、ティーンエイジャーの兄姉と同じ量のデザートを食べさせるべきではない。あるいは、きょうだいの一人はアイシングの飾りが好きで、もう一人はスポンジが好きなら、ケーキの最後の1個をきっかり半分に分けても意味がない。

「そのような不公平感を、我が家では『アンフェアにされた』と呼んでいます。子どもがその言葉を使うと、私たちは彼らが不公平だと思っていることに気がついて、彼らが平等ではなくても公平だと感じる理由を考えます」

 ・常にしゃべる必要はない

 沈黙は強力なツールになる。一方的な譲歩(たとえば、交渉が始まってすぐにオファーを上積みするなど)を回避するためにも、子どもに能動的な発言を促すためにも、沈黙が役に立つ。

「昼食後に、息子はカートに乗ってホテルに戻りたいと言いましたが、私はせっかく晴れているから歩こうと言いました。ただし、すぐに却下するのではなく、黙って少し待ちました。すると息子は、反対方向に遠くまで歩いて、もっと長い距離をカートに乗って帰ろうと提案しました」

 有能なマネジャーは、目標に優先順位をつけて、効果的な質問をし、創造性を刺激して、双方がイエスと言いたくなる合意を生むような提案をする。これらのスキルは、働く親にも役に立つ(特に最近は家で過ごす時間が増えている)。子どもが困難な状況を乗り越えて、効果的な問題解決スキルを学ぶ手助けをしながら、親子で前向きな結果を生むことができるだろう。

 子どもは日々成長しているから、親も交渉術を磨かなければならない。自分の主張にこだわり、情熱的で粘り強い我が子と交渉の実践を積むことによって、仕事の交渉スキルも向上するかもしれない。


HBR.org原文:How to Negotiate…with Your Kids, May 29, 2020.


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