●家庭の交渉でつまずく理由

 重要な取引をまとめている人や、同僚に新しい視点を持とうと説得できる人、昇給や昇進に関する話し合いで主導権を握れる人が、どうして家庭の交渉でつまずくのだろうか。

 子どもとの交渉には、主に3つの課題がある。

 ・感情

 子どもは、同僚とは違うツールを駆使する。罪悪感を誘い、この世の終わりという顔をして見せ、もう一人の親は反対のことを言っているふりをする。そこには、自分がクビにされることはないという自信が少なからずある。もちろん、クビにできるわけがない!

 また、親は仕事のときよりも過剰な振る舞いや反応をしがちだ。オフィスの優秀な交渉人は、問題そのものに集中して、対人関係の力学に惑わされない方法を知っている。

 ・繰り返し

 就寝時間、ゲームをする時間、食事の時間……家庭では同じ会話を何回も繰り返すため、私たちの反応もパターンにはまりがちだ。仕事の交渉はもう少し抑制的で、状況が変わっても同じ話を引きずることはあまりない。

 ・準備

 家庭の交渉事は突然、振ってくる。相手は自分の子どもであり、家事やデザートなど日常生活のさまざまな問題が対象となるから、交渉の計画を立てて気持ちの準備をすることは、基本的にない。仕事の交渉はたいてい予測可能で、あらかじめ分析や評価をして備えることができる。

 問題は、仕事の交渉術が家庭では通用しないこと、ではない。家庭での交渉に活かしていないことだ。仕事の専門的なスキルを家庭でも応用すれば、子どもとの交渉でも、これまで実現されていない価値を解き放つことができる。

 仕事を持つ親は特に、双方の主な利益を守るウィン・ウィンの合意が必要になる。時間とエネルギーは貴重だ。そのような合意は目の前の問題を解決して、再発を防ぎ、人間関係を強化して、家族の時間を充実させる。

 これを達成するための戦略を紹介しよう。