心理学者とエグゼクティブ・アドバイザーである筆者の経験から言うと、危機への対応は緊急、退行、そして回復という3つの段階をたどる。

 緊急であることが明らかになった当初は、チームのエネルギーレベルが高まり、パフォーマンスも上がる。人間はみな、いわゆる「火事場の馬鹿力」を持っている。冒頭で紹介した3人のエグゼクティブのように、その経験はパーパスで満たされているように感じられ、実際に多くのことが成し遂げられる。

 この段階では、リーダーは最大の実力を発揮することが多い。チームも本能的に結束して、きわめて生産的になる。リーダーの権限を疑問視する声はほとんどなく、チームは忙しくも調和的に仕事をする。緊急性が迅速な意思決定を可能にし、チームにアクションを促すバイアスがフル回転で作動する。

 そこに第2段階が到来する。退行だ。全員に疲れが出始めて、目的意識を見失い、小さなことで衝突するようになり、飲食のような基本的なことさえ忘れる(あるいは、過剰な飲食に走る)。

 退行という概念は発達心理学に由来し、人間はプレッシャーに直面すると、未成熟な段階に戻る傾向があることを意味する。コンフォートゾーンに引きこもることで混乱や不安から自分を守ろうとする、人間の防衛機能の一つだ。

 軍事心理学などにより、退行はチームワークにおいて、最も危険な段階であることがわかっている。兵士にとって最大のストレスとなるのは、実のところ勇気や行動を要する危険な任務ではない。待機時間だ。

 見知らぬ僻地で自分のスキルを発揮するチャンスもなく、機器の整備や事務作業をこなさなくてはならない時間、新しいことを経験しない単調で退屈な時間は、戦闘よりもはるかにストレスになりうることがわかってきた。

 この戦略会議疲れが、いまビジネスリーダーと、そのチームに起きている。これはリアルで、伝染力があり、日々ハンマーのように人々の精神に打撃を与える。

 不快な退行段階を避けることはできない。だが、それがどのようなものかを理解し、この危機で最も厳しい段階を切り抜ける方法がわかれば、パフォーマンスの低下を緩和する助けになるだろう。

 リーダーに与えられた課題は、退行段階を建設的に乗り切り、将来の活動再開と再建に向けた準備を進める、回復段階に進むことだ。その方法を以下に示そう。