自己管理

 ここまで述べてきたように、自分がどのような感情を抱いていて、それをどのように表現しているかを認識することにより、その感情に対して示す反応をマネジメントするために必要な情報が手に入る。問題は、ほとんどの場合、そのマネジメントが自然にはできないことだ。

 感情の引き金を引くような出来事を経験すると、その人の中で「偏桃体ハイジャック」と呼ばれる現象が起きる場合がある。感情に支配されてしまうのだ。突然、何の前触れもなく誰かに怒りを爆発させたり、一見すると些細な出来事をきっかけに泣き出したり、作動の遅いコンピュータに激高したりする。

「人がどれくらい優れた選択ができるかは、刺激を受けてから反応を示すまでのあいだに、どれだけスペースを持てるかによって決まる」という言葉を思い出そう。まずは、自分がどのくらいのスペースを持っているかに注意を向けること。そうすれば、そのスペースを広げ、より健全な選択を取ることが可能になる。

 自分の感情が刺激されていると気づいたときは、小休止して、生理と神経を落ち着かせよう。深呼吸をしたり、体を動かしたり、音楽を聴いたりすることにも、感情を落ち着かせる効果がある。

 自分でコントロールできる物事に目を向けることも重要だ。具体的には、目の前の患者や、いま迫られている決断のことだけを考えるのだ。

 注意を払う物事の範囲を狭めることにより、一見すると解決不可能に思えた問題が、実行可能な物事に変わる。そして、そうしたことを実行すれば、安心感と満足感が湧いてくる。

 自分をいたわること全般も重要だ。十分に睡眠を取り、たっぷり栄養を摂り、しっかり運動することは、レジリエンス(再起力)を維持する効果がある。

 自分を支えてくれる人たちに対して、自分の仕事と人生を意味あるものにしている要素について語ろう。研究によれば、週に数回、感謝の気持ちを示したい人物や出来事や物事を3つ書き出すことも、幸福度を高める役に立つ

 信頼できる同僚や友人、コーチ、メンタルヘルス専門家と話をすることも、日々を生き抜いていくために有効だ。現在のような環境では、そうしたことの価値がとりわけ大きい。

 以下、自分自身に問い掛けてみよう。

・自分の感情を刺激する要素にうまく対処する方法を確立できているか。
・自分にコントロールできることは何か。
・睡眠、食事、運動の時間を十分に取っているか。
・自分を支えてくれる人たちはいるか。その人たちに頼ることを自分に許しているか。
・自分の人生に意味を与えているものは何か。